理論と方法
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22 巻, 2 号
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特集 若年非正規雇用・無業の計量社会学
  • 太郎丸 博
    2007 年 22 巻 2 号 p. 137-138
    発行日: 2007/10/31
    公開日: 2008/01/08
    ジャーナル フリー
  • ―高校3年生に対する進路意識調査から―
    内田 龍史
    2007 年 22 巻 2 号 p. 139-153
    発行日: 2007/10/31
    公開日: 2008/01/08
    ジャーナル フリー
     近年、フリーターの増加が社会問題となっているが、学校から職業への「移行」(Transition)に関する研究からは、性別では女性が、また、学歴・家庭背景などが相対的に低い状況にある若者がフリーターになりやすいことが指摘されている。しかし、若者のフリーター「選択」に影響を与える要因についての量的な検討は多くはない。
     本論文は、フリーター選択と近年着目されている社会的ネットワークとの関係に着目し、高校3年生を対象とした質問紙調査から、限定された社会的ネットワークがフリーター選択に影響を与えているかどうかについて検討を行った。その結果、高校生のネットワーク構造は「安定・ホワイトカラー」「不安定・ブルーカラー」ネットワークの2つに分類され、「安定・ホワイトカラー」ネットワークに組み込まれている高校生はフリーターを選択せず、逆に「不安定・ブルーカラー」ネットワークに組み込まれている高校生はフリーターを選択する傾向が見られた。高校生が組み込まれている社会的ネットワークの存在が、若者たちの進路分化に影響を与えていることが示唆されたのである。
  • ―「やりたいこと」は内定率に影響するか―
    太郎丸 博, 吉田 崇
    2007 年 22 巻 2 号 p. 155-168
    発行日: 2007/10/31
    公開日: 2008/01/08
    ジャーナル フリー
     求職者の意識と求職期間の関係を正しく認識することは、求職者に適切な援助を与えるためにも重要である。データの制約から両者の関係を正確に把握することは一般に困難であるが、ジョブカフェ京都の協力を得て、求職者の意識調査の結果と、その後内定までにかかった期間の追跡調査の結果を名寄せすることで、意識が内定率に及ぼす影響を推定することが可能になった。比例ハザードモデルを用いた結果、自信や「やりたい仕事」があることは内定率を有意に高めないが、「目標の期日」や、求職のための具体的な行動は、内定率を高めることがわかった。
  • ―非正規・男性・未婚に着目して―
    岡部 悟志
    2007 年 22 巻 2 号 p. 169-187
    発行日: 2007/10/31
    公開日: 2008/01/08
    ジャーナル フリー
     1990年代以降、若年層を中心に進行した就業の非正規雇用化は、彼らの社会的な地位達成のあり方に大きなゆらぎを与えた。そのような中、若者の間に広がる収入差などの格差に着目した研究は蓄積されつつあるが、一方で当事者である彼らの主観的評価に焦点を当てた研究は相対的少数に留まっている。本稿では、当事者評価の中でも特に「仕事に対する総合的な満足」(仕事満足)を手がかりとし、若年非正規雇用の実態把握から問題点の特定を行った。分析の結果、同じ非正規社員でも、未婚男性の仕事満足が最も低いこと、そして、当カテゴリに属する若者は、無職の若者と生活意識面で強い親和性があり、生家の暮らし向きや学歴などの経歴が恵まれていないことがわかった。さらに、当カテゴリに限定して仕事満足の決定要因を探ったところ、現在の社会的属性ではなく過去の教育体験、とりわけ親や親以外の大人との接触体験の多寡が影響していることが判明した。過酷な労働条件のもとで仕事満足が相対的低位にとどまる若年非正規雇用の問題に対して、その解決の糸口を専ら彼らの働き方や処遇改善だけに求めるのではなく、義務教育段階より大人交流体験を促進する教育プログラムを導入するなどの方策を、政策議論の俎上に載せていくことが急務といえる。
原著論文
  •  
    荒牧 草平
    2007 年 22 巻 2 号 p. 189-203
    発行日: 2007/10/31
    公開日: 2008/01/08
    ジャーナル フリー
     本稿ではRobert D. Mareが提案し、教育達成過程の実証分析で国際的に事実上のスタンダードとなってきた、通称Mareモデルとその応用モデルによる分析(Transitions Approach)を通して、わが国の教育達成過程における不平等とその変動を実証的に明らかにするとともに、不平等生成に関する理論の目指すべき方向性について検討した。分析の結果、先行研究において繰り返し確認された階層効果逓減現象が、わが国の場合は戦前の一定期間にのみ認められること、中等教育機会の平等化と高等教育機会の不平等化の同時進行は、戦後の高学歴化期ではなく戦前における中等教育のマス化に関わって生じたこと、中等教育であれ高等教育であれ格差の拡大は上位層による希少財の先取りと関わって生じた可能性のあること、MMI仮説の主張する上位層の飽和による平等化がわが国の場合には必ずしも認められるわけではないこと等が明らかとなった。
  • ―対戦相手変更コストが協力行動の促進に果たす役割―
    金井 雅之, 小林 盾, 大浦 宏邦
    2007 年 22 巻 2 号 p. 205-225
    発行日: 2007/10/31
    公開日: 2008/01/08
    ジャーナル フリー
     近現代社会においては、個人の自由意志によって加入や退出が可能な、企業やNPO のようなアソシエーション型組織が、人びとの生活に重要な役割を果たしている。こうした組織において、組織目標の達成のために十分な貢献をせず他の成員の貢献にただ乗りするフリーライダーを抑制するためのメカニズムを、進化ゲーム理論的に分析した。具体的には、これらの組織が社会の中で十分多く存在し、個人はそうした組織間を自由に移動することができ、ただし移動には一定のコストがかかる、と仮定した場合に、フリーライダーが増加するのを防ぐための条件を探った。
     理論的知見は以下の4 つである。第一に、このモデルでフリーライダーを抑制するためには、組織間の移動すなわち対戦相手の変更にコストがかかるという仮定が不可欠である。第二に、相互作用が十分多い回数おこなわれるという仮定も必要である。第三に、成員の貢献が組織全体で十分大きな相乗効果をもつような組織構造になっていることが重要である。第四に、一般に組織の人数は小さいほうが協力を達成しやすいが、人数が十分多いと仮定した場合でもコストのかかる移動が可能であればフリーライダーの侵入を阻止できる。
     さらに、このモデルの妥当性を検証するために、労働市場における転職に着目して、職場のフリーライダーとの関係を分析した。その結果、もっとも主要な第一の理論的知見は、おおむね支持された。
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