理論と方法
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原著論文
技能変数をもちいた所得決定構造の分析
長松 奈美江
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2008 年 23 巻 1 号 p. 73-89

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抄録

 所得格差を説明する理論の多くは、個人が仕事において発揮する技能が高い所得と結びつくことを指摘する。しかし、技能は直接測定することが困難であるため、技能と所得格差との関係を実証的に明らかにする試みは多くはない。本稿は、技能を、「仕事における裁量」と「仕事の複雑性」という二つの側面から測定し、所得格差をもたらす技能の役割を実証的に明らかにした。
 2004年に全国の成人男女を対象に実施された社会調査データをもちいて所得決定構造の分析を行った結果、以下の三つの知見が得られた。第一に、高い所得に結びつく技能は、発言権や決定権をもったり、資料の分析や企画を行うといった組織における意思決定に関する技能や、機械装置の操作に関する技能であった。第二に、性別、学歴、雇用形態、企業規模、勤続年数の所得への効果の一部は、技能の所得への効果により媒介されていた。しかし第三に、技能をコントロールしても、性別、雇用形態、企業規模の所得への効果は大きく、同じ技能を発揮していても、女性ほど、パートほど、そして企業規模が小さいほど所得が低いことがわかった。

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© 2008 数理社会学会
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