理論と方法
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特集 日米数理社会学会議
職業的地位の構成イメージと地位志向
―職業の社会的地位の全体像に関する個人の認知に着目して―
塩谷 芳也
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2010 年 25 巻 1 号 p. 65-80

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抄録

 本研究では地位志向の強弱に関する個人差を職業的地位の構成イメージによって説明する.地位志向とは社会的評価の高い職業や高い地位に就くことを重要視する価値意識である.職業的地位の構成イメージとは,職業の社会的地位の全体像に関する個人の認知である.個人が持つ職業的地位の認知について検討することの意義は,職業威信スコアのような社会的地位尺度を構成することだけではない.従来の階層意識研究では,職業や社会階層に関する個人の認知が説明変数として着目されることは稀であったが,職業的地位の認知を検討することによって社会階層をめぐる個人の意識をよりよく説明できる可能性がある.本研究はその一例を示すものである.職業的地位の構成イメージを捉えるため「自由測定法」という新たな測定法を開発し,それを用いて実施された「職業と社会に関する仙台市民意識調査(仙台調査)」データを分析した.その結果,以下の4点が明らかになった.(1)個人が持つ職業的地位の構成イメージは,小分類レベルの個別の職業ではなく複数の職業の束を単位として形成されている.(2)職業的地位が何段階に分かれているかについては人びとのあいだにコンセンサスは存在しない.(3)職業の社会的地位を細かく多段階に区別して認知する人びとほど地位志向が強い.(4)職業間の社会的地位の上下差に関する認知は地位志向とは無関連である.

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© 2010 数理社会学会
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