2011 年 26 巻 2 号 p. 389-404
Fischerによる下位文化理論や山岸による信頼の解き放ち理論,さらには社会関係資本論など,社会科学に影響を持つ多くの理論において,知人数は重要な要素になっている.しかし,交換関係や高頻度の接触があるなど,比較的関係の強い他者の範囲を超えて,その総数と相関する要因が探索された事例はほとんどない.本研究は,電話帳法を用いて測定された知人数を目的変数とし,分位点回帰分析を用いてメディアンと上位,下位のパーセンタイルに対する説明変数の効果を検討した.分析の結果,知人数のメディアンに対する年齢,教育年数,世帯年収,携帯利用,一般的信頼の正の効果が確認され,おおよそ,先行研究の結果が再現された.さらに,q10(10パーセントタイル点,以下,同じ)からq90まで,10パーセントタイル刻みで分位点を予測したところ,年齢と教育年数が高いときに,特にq10,q50よりもq90が大きく増加すること,居住地人口と対人不安が高いときには逆に減少することが明らかになった.すなわち,知人数が極端に大きい,ネットワークのハブと考えられる回答者は,高齢,高学歴で対人不安が低く,都市度が低い地域に存在する確率が高いことが示された.