理論と方法
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原著論文
相対的剥奪と準拠集団の計量モデル
Yitzhakiの個人相対的剥奪指数の応用
石田 淳
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2011 年 26 巻 2 号 p. 371-388

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抄録

 本稿では,階層意識生成プロセスにおける他者比較メカニズムを,理論的に統一的な視座から計量モデルに導入することを目指し,Yitzhaki(1979)の個人相対的剥奪指数,そしてその関連指数としての相対的満足指数,平均からの乖離を示す総合評価指数を導入し,2005年SSM調査データを用いて,収入ならびに生活全般の満足感を説明する分析を行った.分析の結果以下のことが明らかになった.収入満足については,男性において個人収入の他者比較による剥奪度が,収入の多寡そのものとは異なる独自の規定力を持つことが分かった.特に年齢階層を準拠集団とした剥奪度がもっとも説明力を高めた.一方、女性については男性とは異なる評価メカニズムが示唆された.生活満足については,世帯単位の収入比較による剥奪度が大きな負の効果をもち,絶対額よりも強く満足感を規定していることが明らかになった.特に,回答者の性別や年齢階層といったデモグラフィックな準拠基準,そして市郡規模という地理的な準拠基準が,職業階層や教育レベルという社会経済的地位基準と比べて相対的に大きな説明力をもっていることが分かった.

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© 2011 数理社会学会
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