理論と方法
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シンポジウム 社会階層と健康
社会階層と健康
疫学からのアプローチ
近藤 尚己
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2013 年 28 巻 1 号 p. 21-34

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抄録

 疫学は,集団の健康状態を把握することに加え,健康の決定要因を探求することも重要なテーマとしている.近年,社会疫学により,社会階層や所得格差といった健康の社会的決定要因についての研究が進められ,階層間の健康格差が存在することは今や「確固たる事実」として認識され,様々な保健政策に応用されている.しかし,社会と健康との関係についての研究のアプローチについては,疫学とその他の社会科学とで異なる場合がよくあり,しばしば論争が行われてきた.疫学は疾病や死亡といった不健康の発生を予防する公衆衛生活動のツールであるという実学としての側面が強いことがその理由の一つとだと思われる.また,疾病の発生に関する生物学的・社会的なメカニズムが非常に複雑であることもその理由の一つであろう.社会の諸事象と健康との関連を扱う研究は,疫学をはじめとした医学系の研究者と社会科学者とによる共同作業で進めるべきであろう.

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© 2013 数理社会学会
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