理論と方法
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原著論文
下降回避か, 単純進学か
教育達成の階層間格差における下降回避仮説の検討
毛塚 和宏
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2013 年 28 巻 2 号 p. 337-354

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抄録

 教育達成の階層間格差を説明する相対リスク回避仮説(Breen and Goldthorpe 1997)の検証は世界各国で行われたが,日本においてはおおむね否定的な結果が得られている.本稿では,日本における受験制度を考慮して,下降回避仮説の代替モデルとして,定員と自分の成績を参照して,進学するか否かを決定するという「単純進学モデル」を構築し,マクロ・ミクロの両面から下降回避仮説と比較・検討を行った.下降回避仮説としては,BreenとGoldthorpeの相対リスク回避モデルと,学歴に対する下降回避を考慮した二重回避モデルを想定した.マクロレベルでは,数理モデルを構築し,各モデルに基づいて大学進学率を導出した.これを経験的データと照らし合わせてモデルの妥当性を検討する.ミクロレベルでは,数理モデルから導出された個人の意思決定に関する命題に対して,JGSS-2000, 2001データを用いて検討を加えた.ミクロレベルの分析には,ロジスティック回帰モデルを用い,モデルを同定するために,一部の変数に対しプロビット変換を施した.結果,下降回避仮説を導入した2つのモデルは現実のデータに対する説明力を欠き,,単純進学モデルが最も妥当性が高いことが示された.特に,相対リスク回避モデルはマクロレベルの検討において棄却された.

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© 2013 数理社会学会
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