1988 年 3 巻 1 号 p. 57-76
理解社会学の基本的な理論仮説は、(1)社会的行為者は彼らを取り巻く自然的および社会的世界に関する彼ら自身の理論的知識を有しており、社会現象はこうした理解を媒介とする社会的行為によって形成されている、(2)社会科学的探求の対象は、このような行為者の理解およびそれによって形成される社会現象である、というものである。ギデンズ(1976)は、これを二重の解釈学と呼んだ。この理論仮説は社会学的探求の反照的性格を表現しているが、理解社会学者たちはこれに基づいて、いくつかの方法論的主張を行った。シュッツは主観的視点をとるべきことを主張したし、ウィンチは社会科学は所与の生活様式のもとにおけるルールを理解しなければならないと主張した。しかし、理解社会学者たちの理論仮説は妥当なものであるけれども、彼らの方法論的主張はそれから論理的に導かれるものではなく、不合理なものである。社会学的探求は、その反照的性格にもかかわらず、行為者の世界理解とそれがもたらす社会現象に関する「正しい」理解をめざしたものとして、自律した認識活動をなしている。