理論と方法
Online ISSN : 1881-6495
Print ISSN : 0913-1442
ISSN-L : 0913-1442
特集 コンピューター支援調査の可能性
政治学におけるCAI調査の現状と課題・展望
―早稲田大学CASI調査と選挙結果の比較から―
田中 愛治日野 愛郎
著者情報
ジャーナル オープンアクセス

2015 年 30 巻 2 号 p. 201-224

詳細
抄録

 政治学におけるCAI調査は,とりわけ選挙調査の文脈で発展してきた.本稿は,選挙調査におけるCASI調査の取り組みを概観し,CASI調査には,集計の迅速さ,設問や選択肢のランダム化,回答に応じた質問内容のカスタマイズ,回答時間の測定,画像や動画を用いた調査実験の実装,社会的望ましさバイアスの軽減,代表性の担保という7点のメリットがあることを論じる.一方,コストの高さや回収率の低さといったデメリットがあることも指摘する.その上で,回収率の低さというデメリットは代表性を損なうことにつながるのか,そして,CASI調査は,社会的望ましさバイアスを軽減するというメリットをどの程度活かしているのかを,過去に実施された選挙後の世論調査と公式発表されている選挙結果を比較して検証した.その結果,回収率の高低は,必ずしも投票率の乖離(回答データにおける投票率と実際の投票率の差)や得票率の乖離(回答データにおける各党の得票率と実際の各党の得票率の差)に結び付いていないことが明らかになった.一方,CASI調査は,投票率,得票率のいずれにおいても最も選挙結果との乖離が小さい調査モードであることが明らかになった.ただ,コストの高さという課題は残っている.

著者関連情報
© 2015 数理社会学会
前の記事 次の記事
feedback
Top