理論と方法
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30 巻, 2 号
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原著論文
  • 山本 耕平, 太郎丸 博
    2015 年 30 巻 2 号 p. 165-180
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/07/10
    ジャーナル オープンアクセス
     本稿では,日本・イギリス・アメリカの社会学の相違を,定量的な比較を通して検討する.具体的には,1)どのような方法がもちいられるか,2)雑誌論文と一般書籍のどちらがより引用されるか(これを引用文化とよぶ),という二点を各国における実証主義の強さの相違を表すものとして比較する.日英米の学術ジャーナル各2誌において2012年に掲載された論文をすべてサンプリングし,それらの論文で用いられている方法を4つに,文献リストに挙げられている文献を4種類に分類した.このデータから,引用文献数と,引用文献中の雑誌論文および一般書籍の割合を比較した.用いられる方法の種類,引用文献数,引用文献中の雑誌論文比をそれぞれ従属変数とし,他の変数を独立変数とする分析の結果,1)方法についてはアメリカにおいて経験的研究,とくに計量への指向が強く,2)引用文献の数は米英日の順で多く,引用文献中の雑誌論文の割合は米英において日本よりも高いことが分かった.以上から,イギリスの位置づけは明確ではないが,実証主義はアメリカでもっとも強く日本でもっとも弱い,という相違が確認できた.
特集 コンピューター支援調査の可能性
  • 杉野 勇
    2015 年 30 巻 2 号 p. 181-184
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/07/10
    ジャーナル オープンアクセス
  • With a Focus on Computerizations
    Tom W. SMITH, Jibum Kim
    2015 年 30 巻 2 号 p. 185-200
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/07/10
    ジャーナル オープンアクセス
    Surveys are conducted using many different modes (e.g. face-to-face, mail, telephone, Internet). Because different modes have different error structures, it is very important to understand the advantages and disadvantages associated with each mode. In recent years there have been major changes in the modes typically utilized in surveys. In particular, there has been increases in the use of computers in data collection, self-administration, and mixed-mode designs. The implications of these and future changes are considered.
  • ―早稲田大学CASI調査と選挙結果の比較から―
    田中 愛治, 日野 愛郎
    2015 年 30 巻 2 号 p. 201-224
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/07/10
    ジャーナル オープンアクセス
     政治学におけるCAI調査は,とりわけ選挙調査の文脈で発展してきた.本稿は,選挙調査におけるCASI調査の取り組みを概観し,CASI調査には,集計の迅速さ,設問や選択肢のランダム化,回答に応じた質問内容のカスタマイズ,回答時間の測定,画像や動画を用いた調査実験の実装,社会的望ましさバイアスの軽減,代表性の担保という7点のメリットがあることを論じる.一方,コストの高さや回収率の低さといったデメリットがあることも指摘する.その上で,回収率の低さというデメリットは代表性を損なうことにつながるのか,そして,CASI調査は,社会的望ましさバイアスを軽減するというメリットをどの程度活かしているのかを,過去に実施された選挙後の世論調査と公式発表されている選挙結果を比較して検証した.その結果,回収率の高低は,必ずしも投票率の乖離(回答データにおける投票率と実際の投票率の差)や得票率の乖離(回答データにおける各党の得票率と実際の各党の得票率の差)に結び付いていないことが明らかになった.一方,CASI調査は,投票率,得票率のいずれにおいても最も選挙結果との乖離が小さい調査モードであることが明らかになった.ただ,コストの高さという課題は残っている.
  • ―政治的洗練性としてのイデオロギー
    遠藤 晶久, 山崎 新
    2015 年 30 巻 2 号 p. 225-240
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/07/10
    ジャーナル オープンアクセス
     CAI調査の大きな利点としてあげられるのは,調査プログラムで設定さえすれば回答時間という新しい種類のデータを手に入れられることである.質問を尋ねてから(あるいは表示してから)回答を得るまでの時間を計測した回答時間データは,回答結果のみでは知ることができない,その回答に至るプロセスを推測するための情報として利用可能である.本稿では回答時間データの分析を通じて,新たな世論調査分析の可能性を示す.その一例として,イデオロギーをテーマとして取り上げ,有権者のイデオロギー認知を政治知識と対照させることで政治的洗練性概念との関係を検討する.分析の結果,短時間で正解を取り出すという政治知識の回答過程に比べて,正解にたどりつくまでに時間がかかりやすい政党間対立認識は,有権者が確固として既に有しているものというよりも,何らかの情報処理を必要とするものであるということを示した.つまり,イデオロギー認知は政治知識と異なる認知モードにしたがっており,現実の保革イデオロギーによる政党間対立は,有権者の中では「知識」ではなく,類推からたどりつくものであることが示唆された.
  • 前田 智彦
    2015 年 30 巻 2 号 p. 241-252
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/07/10
    ジャーナル オープンアクセス
     本稿は,法学・法社会学におけるコンピュータ支援調査の展望を示す.CAPI,CATI,CASIというコンピュータ支援調査の3類型に共通する,質問票の電子化の一般的な利点には,ヒューマンエラーと調査実施後の時間的・金銭的コストの削減がある.CASIの変形としてのインターネット調査サービスについては,調査対象者の抽出を調査機関の手持ちの登録済みモニターから行う点に特徴があり,これが有益な用途も存在する.これらの利点の恩恵は,法学・法社会学の領域での社会調査にも及びうる.特に,センシティヴな問題についての回答誤差の減少,複雑な質問票を用いた自記式調査での誤回答・不正規回答の防止の利点が大きい.実際の社会調査での利用はまだ端緒段階であるが,調査方法の違いによる回答のズレが明らかになっており,従来型調査,CAI,インターネット調査を並列で行うなど方法論的な視点も入れた実証研究が必要とされている.
  • 杉野 勇, 俵 希實, 轟 亮
    2015 年 30 巻 2 号 p. 253-272
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/07/10
    ジャーナル オープンアクセス
     本論文は,調査モードに着目しICTを活用した調査方法およびそれを用いた実験的調査を紹介し,方法論上の諸課題を明らかにする.まずは,CAI(Computer-Assisted Interviewing)におけるモード比較研究の特徴と課題について簡単に述べた後,欧米の研究者に対して行った聞き取り調査からいくつかの論点を示す.そうした背景の下でわれわれは次のような「モード比較調査」を実施した.すなわち,これまで日本の社会調査の標準であった PAPI (Paper and Pencil Interviewing),コンピュータ支援の他記式調査 CAPI(Computer-Assisted Personal Interviewing),自記式調査CASI (Computer-Assisted Self-Interviewing)の3つの調査モード(データ収集モード)を確率抽出標本に無作為に割り当てて,同一の調査票を用いて回答を得,比較を行った.その結果,モード間で回収率にほぼ差がなかったことからICTの導入が協力依頼の妨げとはなっていないこと,調査員の好意的な反応が得られたこと,自記式部分では項目無回答比率が高くなる可能性があることなどの知見を得た.この調査実施の経験とパラデータの分析から,ICTを活用した社会調査の今後の課題と可能性,そして調査モード研究が取り組むべき課題を述べる.
  • ―実験的デザインにもとづくPAPI,CAPI,CASIの比較―
    歸山 亜紀, 小林 大祐, 平沢 和司
    2015 年 30 巻 2 号 p. 273-292
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/07/10
    ジャーナル オープンアクセス
     本稿の目的は,調査モードによる回答への影響を検証することである.これまで日本の学術研究において伝統的に用いられてきた紙の調査票を用いるPAPI(Paper and Pencil Interviewing)と,ICTを用いたCAPI(Computer-Assisted Personal Interviewing),CASI(Computer-Assisted Self- Interviewing)の3モードを回答者に無作為に割り当てた実験的デザインの調査データを用いて,PAPIとCAPI(コンピュータ支援の有無が異なる),CAPIとCASI(どちらもコンピュータ支援であるが他記式と自記式の違いがある)のそれぞれで,意識や行動についての回答平均値を比較した.その結果,PAPIとCAPIでは差異は見られなかったが,CAPIとCASIでは差異が見られた.また,傾向スコアによってモード間の無回答誤差の影響を調整した分析によって,この差異が無回答誤差によるものではないことを確認した.近い将来,ICTを用いたモードへの転換がおこると予想されるが,これまでPAPIで実施されてきた調査をCAPIでの実施に切り替えたとしても,それによって比較可能性が損なわれる可能性は低い.しかし,紙の調査票を用いた場合と同じように,コンピュータ支援調査においても自記式と他記式ではモード差が見られる項目があるため,時系列比較を主眼とする調査においてPAPIなど他記式で行われていた調査をCASIで実施することには慎重になる必要がある.
研究ノート
  • ―Mokken Scale Analysis による条件の重要性の順位の検証―
    五十嵐 彰
    2015 年 30 巻 2 号 p. 293-306
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/07/10
    ジャーナル オープンアクセス
     福岡『在日韓国・朝鮮人』(1993)をはじめとし,「日本人の条件」に関する議論は多い.しかし,従来の研究方法では,福岡の提起した問題である「それぞれの条件がどれくらい重要なのか」について,一般に共有されているかを分析できない.さらに,日本に強く愛着を持つ個人や,外国人に脅威を抱く個人間でこの重み付けは大きく変動する可能性がある.これの問題に対処するため,Mokken scale analysisを用いて,一般的に「日本人の条件」項目の重要性の重み付けが共有されているかを分析する.結果として,日本人は「日本人であるという意識」「日本国籍」「出生地」「日本語」「居住地」「先祖」「日本の法制度尊重」「仏教・神道の信仰」という順で「日本人の条件」に対して共有した順序の重要性を抱いていることがわかった.さらにこの順位は日本への帰属意識が高い集団や外国人に脅威を感じる下位集団間でもほぼ共有されていることが示された.
  • ―大陸と台湾の大学生の比較を通じて―
    朱 安新
    2015 年 30 巻 2 号 p. 307-317
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/07/10
    ジャーナル オープンアクセス
     中国社会では家族の急激な小規模化が進んでいるため,若い世代の世代間同居に関する意識が,今後の家族形態を予測するうえで注目されはじめている.しかし,まだ全国レベルの統計データが欠如している.そこで,本稿では2013年に中国大陸と台湾で大学生を対象に量的調査を実施し,大学生の世代間同居意識の現状と規定要因を明らかにすることを試みた.分析の結果,(1)世代間同居意識は低い水準にあるものの,伝統的規範のうち父系規範が同居意識の促進要因となっていた.ただし,親孝行規範は同居意識を促進するという傾向は見られなかった.(2)台湾に比して大陸においては都市に戸籍をもつ大学生が農業戸籍の大学生よりも,親世代と同居しようとする意識が顕著に低かった.したがって,大陸の都市と農村の二元社会構造がいまだに世代間同居意識に影響を与えていた.(3)大陸では男子学生が女子学生より世代間同居を意識する点で,台湾と異なることを明らかにした.
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