理論と方法
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原著論文
社会的属性と収入の不安定性
―グループ内の不平等に注目した分析―
小川 和孝
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ジャーナル オープンアクセス

2016 年 31 巻 1 号 p. 39-51

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抄録

 本論文の目的は,通常の回帰分析で注目されているグループ間の不平等にくわえ,グループ内の不平等を明示的にモデル化した分析を行うことである.グループ内の分散の異質性に注目することで,どのような社会的属性を持つ人々がより不安定な状況に置かれているのかが分析の関心となる.従属変数の条件付き期待値と残差分散に対してそれぞれ共変量ベクトルを設定し,それらのパラメータを同時推定するモデルを用いる.データは,「社会階層と社会移動全国調査」の1995年調査A票および2005年調査であり,従属変数には個人収入および世帯収入の対数値を用いる.分析の結果,男女ともに正規雇用者や既婚者は収入の平均が高いだけではなく,それぞれのグループ内部での収入のばらつきが小さいことが明らかにされる.これらは日本の社会制度の特徴とされてきた「男性稼ぎ主型」モデルが想定してきた人々において,収入の安定性が大きいことを示唆する.本論文の知見は,これまでの社会階層研究やライフコース研究において重要な問いではありながらも直接的に検証が行われてこなかった,リスクや不安定性について新たな視点を導入した.

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© 2016 数理社会学会
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