理論と方法
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特集 2015年SSMが捉える階層構造の変容
少子高齢社会における社会階層とライフコース:
出身階層のライフイベントへの効果に着目して
白波瀬 佐和子石田 浩
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2018 年 33 巻 2 号 p. 185-201

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抄録

 本研究の目的は,個々人のライフコースで発生する様々なイベントを出身階層との関係から検討していくことにある.人生の初期,中期,後期におけるライフイベントの発生に着目し,それらに対する出身階層の効果を検討することで,今までの労働市場を中心に展開された社会階層研究とは異なる新たな地平を切り開くことを試みる.本論文では,ライフコースにおける3つのステージに着目する.40歳までの初婚,標準的なライフコースを歩んできたか,そして,高齢期における世帯類型に注目して,出身階層の影響の有無を検討する.本論で分析するデータは,2015年SSM調査である.具体的なリサーチクエスチョンは,(1)3つのライフステージのイベントや状況に出身階層の影響が認められるか,(2)父階層と母階層を区別することで両者の効果に違いがあるのか,(3)本人が獲得した学歴によって出身階層からの影響に違いがあるのか,である.分析結果によれば,いずれのライフステージにあっても出身階層の効果が認められ,その効果はライフステージの後半にあっても確認された.また,学歴によって出身階層からの効果に異質性はみられず,たとえ高学歴を獲得したとしても出身階層の不利さを挽回,あるいは恵まれた出身階層の効果を強化するような交互作用はみられなかった.初期の格差(出身階層)は個人のその後のライフイベントに継続して影響を及ぼしていた.

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© 2018 数理社会学会
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