理論と方法
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特集 2015年SSMが捉える階層構造の変容
日本における家族構造と世代間階層移動:
キョウダイ構成に着目して
苫米地 なつ帆三輪 哲
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2018 年 33 巻 2 号 p. 202-217

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抄録

 本稿の目的は,世代間階層移動の構造がキョウダイ数や出生順位といかに関連しているか,その趨勢はいかなるものかを明らかにすることである.検証のために1995年SSM調査データ,2005年SSM日本調査データ,2015年SSM調査データをマージしたデータセットを用い,分析は対数線形モデルの1つのモデルであるコアモデルをベースにおこなった.はじめに,出身階層と家族構造の関連,家族構造と到達階層の関連について分析した結果,出身階層にもとづく出生力格差は通時的に安定的であることが示された.そしてまた,出生順位と到達階層の関連も安定的であった.続く家族構造と世代間移動の関連の分析からは,男性では出生順位によって世代間移動の構造に差異がみられ,出生順位が早いほど移動機会が閉鎖的であることが明らかになった.また,その構造は世代を超えて全体的には安定しているものの,自営業層においては出生順位による差異が縮小してきたこと,農業層においては差異が拡大してきたことが示された.以上の結果より,少子化のなかで階層移動に対して家族構造のもつ意味が小さくなるか大きくなるかは,それぞれの階層が置かれた社会的文脈に依存する点が示唆される.

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© 2018 数理社会学会
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