抄録
沖縄八重山の籠もりと雨乞いの祭祀で歌われる神謡を取り上げ、神と交流する巫女に着目して神婚譚生成の過程を探る。波照間島の籠もりの祭祀では、父なくして身籠もり誕生した子が父神を連れて祭りの場に現れ籠もりの主として村落を守る、という内容の神謡が歌われる。同じ八重山の石垣島白保でもこれとほぼ同一の内容が雨乞いの神謡として歌われていた。両者の関係は何か、雨乞いになぜ神婚をモティーフにした神謡が歌われるのか。王府儀礼の宗教世界との相違にも言及しつつ、巫女のシャーマニズムの視点から生成する神話の現場を考察した。