理論と方法
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論文
混合効果モデルとしてみたコウホート分析モデル
坂口 尚文中村 隆
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2019 年 34 巻 1 号 p. 3-17

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抄録

 本稿では,階層型コウホート(HAPC)モデルによる推定でコウホート効果がフラットになるメカニズムを明らかにし,ベイズ型コウホート(BAPC)モデルで用いられているパラメータの1次階差に着目することが妥当であることを述べる.HAPCモデルは近年のコウホート分析において標準的手法であり,一般的に時点とコウホートを個々の対象者が属する集団の効果として,それらを変量効果として扱う混合効果モデルである.しかしながら,HAPCモデルによる推定はコウホート効果が想定よりもフラットになりやすいとの批判もなされてきた.他方,BAPCモデルはパラメータの1次階差に正規分布を仮定した経験ベイズ流の枠組みで従来とらえられてきたが,混合効果モデルとしてとらえることも可能である.両者とも変量効果の導入で識別不足を解消する点は共通だが,コウホート分析における識別問題へのアプローチは異なる.実証例として,コウホート効果が大きいと考えられる男性大学卒割合を用いて,両モデルの推定結果の違いを示す.HAPCモデルの推定はコウホート効果がフラットであるのに対し,BAPCモデルはコウホート効果が大きく,新しい世代ほど大学卒割合が高くなるという特徴を捉えていた.

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© 2019 数理社会学会
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