理論と方法
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展望論文
ソフトウェア・プログラムに見るアメリカ社会科学の超勢
 
スミス ハーマン W.
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1990 年 5 巻 1 号 p. 115-130

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抄録

 アメリカの社会科学者の中で、社会理論の展開を支援するためにIBM-PC用のプログラムを作ったり利用したりしている人の数は増えつつある。本論文では、現在の到達水準を示すいくつかのソフトウェア・プログラムを紹介して、アメリカにおけるコンピュータ志向の社会科学理論が目指している方向を明らかにする。最初に紹介するINTERACTは、感情統御理論(Affect Control Theory)に基づき、数学的な等式を用いて感情と役割の変化に関する予測を行なうものである。次に、より従来的な知識の体系化に基づく2つのエキスパートシステムを紹介する。第1の、PLACECONは、児童福祉の事例の措置について相談相手をつとめる実験的なシステムである。第2の、EX-SAMPLEは、標本抽出の作業に含まれる意思決定過程をルーチン化したものであり、調査に携わる研究者を支援する。典型的なエキスパート・システムの多くは、本物のエキスパートにとって注目に値するものではない。しかしETHNOは、プール代数に基づく適用範囲の広いプログラムであり、社会的相互作用の分析を体系化する際に非常に役立つ。ETHNOは、非計量的な研究(一連の出来事や対象物の構造もしくはダイナミックスの底に潜む必要条件や十分条件を明確化すること)を支援する。最後に紹介するSOARは、上記のプログラムすべてが持つ最大の問題点の1つを克服している。すなわち、プログラムに組み込まれているルールがどれも適用できない場合や、適用可能なルールが多いため競合している場合に生じる問題に対処することができるのである。重要な点は、人間がいなくても学習できる人工知能システムへの道をSOARが示していることである。以上のプログラムはそれぞれ、従来のコンピュータ・プログラムでは不可能であったような、理論を形成したり展開したりするための革新的な方法を示しているのである。

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© 1990 数理社会学会
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