理論と方法
Online ISSN : 1881-6495
Print ISSN : 0913-1442
ISSN-L : 0913-1442
5 巻, 1 号
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
特集 意味と社会システム―社会理論のフロンティア―
  • ―「社会理論のフロンティア」を探る―
    江原 由美子
    1990 年 5 巻 1 号 p. 1-5
    発行日: 1990/04/01
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
  • ─「意味と社会システム」再考─
    山崎 敬一
    1990 年 5 巻 1 号 p. 7-22
    発行日: 1990/04/01
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
     現象学的社会学やエスノメソドロジーを初めとする「意味派」の社会学の興隆以来、「意味」の問題は社会理論の中心的課題の一つとして認知されるようになってきた。それにともない、システム論の側でも、いかにして「意味」の問題を「社会システム」の中に取り込むかが緊急の課題となりつつある。
     だが、そもそも「意味」と「社会システム」をそれぞれ独立にとらえることは可能なのだろうか。この論考では、「我々がいかにして自己や他者を理解できるのか」という視点から、「意味」の問題をとらえ直してみたい。それによってまた、「意味と社会システム」「主観的意味と客観的規則」「個人と社会」といった従来の社会学的思考を支配してきた二分法がはたして成立可能なのか、もう一度考え直してみたいと思う。
  • ─意味の理論はいかなる必然性のもとで社会の理論でもあるのか?─
    大澤 真幸
    1990 年 5 巻 1 号 p. 23-42
    発行日: 1990/04/01
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
     我々にとっては、任意の事物・事象は「意味」を帯びたものとして現象する。(1)最初に、我々は、意味についての現象学的な規定から出発し、意味に対する志向性が、一種の選択の操作として記述できることを示す。選択の操作は、異なる可能性の排除と保存によって特徴づけられる。すなわち、ある特定の「意味」において対象の同一性が規定されたとき、対象の他なる同一性は排除されると同時に、可能なるものとして保存されてもいるのだ。(2)ついで、我々は、意味の概念と情報の概念を区別することによって、意味に向けられた選択の操作が、自己準拠的な構成を取らざるをえないということを明らかにする。このことは、対象の同一性が意味を通じて決定されるとき、同時にその対象が所属する世界の同一性が指し示されていることを含意している。しかし、世界と自己準拠的な選択の操作は、その根本的な単一性(孤立性)のゆえに、同定不可能なものにみえる。というのも、我々は、選択の操作や世界がまさにそこからの区別において存在するような「外部」を、積極的に主題化することができないからだ。(3)そこで、我々は、分析哲学が提起した、「志向的態度(信念)についてのパラドックス」を検討する。志向的態度についての言明は、意味を規定する選択の操作を言語的に表示するものである。我々の解釈では、パラドックスは、他者が存在するときそしてそのときのみ、世界や選択の操作の同定を可能ならしめる「外部」が、構成される、ということを含意している。したがって、意味は、ただ、他者の存在を根源的な事実として認める理論の中でのみ、正当に論ずることができるのだ。言い換えれば、意味は、本質的に社会的な現象なのである。
  • 徳安 彰
    1990 年 5 巻 1 号 p. 43-57
    発行日: 1990/04/01
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
     本稿においては、社会学の基礎理論にとって意味の問題を適切に扱うことが必要である、という認識に基づいて、社会意味論と名づけることができるような社会学理論の構築の可能性について論じられる。社会意味論にとっての方法論的課題は、主観主義/客観主義、個人主義/集合主義という対立の問題を解くことであり、意味現象の科学的認識のために客観主義が選択され、意味現象のダイナミズムを記述・説明するために個人主義と集合主義の統合が選択される。理論的課題は、意味概念そのものの位置づけ、個人の主体性の位置づけ、過程論や変動論の位置づけの3つが設定される。
     個人の主観に準拠した場合、意味構成とは主観の志向性と世界との関係であり、世界は時間的、空間的、様相的という3つの次元で分節化された事物や事象の差異関係と等置関係によって意味を付与される。意味構成過程は同時にコミュニケーション過程でもあり、とくに相互に志向しあう自己と他者の関係の中から意味の社会性という契機が出てくるが、意味の社会性の問題を解くためには、新しい統合的メディア論の構築が必要である。さらに意味の社会性の問題は、社会的秩序の問題と関係づけられ、意味の妥当性と正統性という2つのレベルを区別することによって、秩序形成のダイナミズムの解明への手がかりをつかむことができる。
論文
  • 丸田 利昌
    1990 年 5 巻 1 号 p. 59-80
    発行日: 1990/04/01
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
     本稿は,Parsonsによって提起された「社会秩序はいかにして可能か」という問題を,「社会秩序」を「社会状態の安定性」とよみかえることによってあらためて定式化し,かつ,それに対する解答を提示することを試みるものである.本稿の考察は,「個人主義的結託形成モデル」とよばれる理論モデルに準拠するかたちで展開される.個人主義的結託形成モデルは,「結託」および「コア」という「協力ゲーム」的概念を本質的に援用するものである.
     本稿は,まず第一に,結託形成が純粋に功利主義的におこなわれるという状況を「功利主義的結託形成モデル」というかたちで定式化する.功利主義的結託形成モデルにおいては,「安定な社会状態の非存在」=「社会状態の永続的推移」=「社会秩序の不在」が帰結しうる.これに対し,結託形成がある「通時的diachronic」な「契約」としてなされるという状況を,「結託形成過程の単調性」という形式的概念をもちいて,「契約モデル」として定式化する.さらに,契約モデルにおいては安定な社会状態が必らず存在するということを確認する.すなわち,契約モデルという安定な社会状態の存在を論理的に保証するようなモデルを定式化することが,社会秩序の問題に対して本稿が試みる解答である.
  • ─メタ規範ゲームの展開─
    織田 輝哉
    1990 年 5 巻 1 号 p. 81-99
    発行日: 1990/04/01
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
     「秩序問題」は、社会学の基本的な問題の一つである。しかし、秩序がいかにして維持されるかは一定の説明を与えられても、秩序がいかにして生まれてくるかについては十分取り上げられてきたとはいえない。ここでは、秩序の生成問題を社会的ジレンマ状況における協調の成立としてとらえて検討していく。反復囚人のジレンマではしっぺがえし戦略により秩序が成立するが、n人の場合はしっぺ返しは有効でない。また「選択的誘因」はそれを与える主体自体が公共財であり2次のフリーライダー問題を招来する。これに対して、アクセルロッドの「メタ規範ゲーム」は、罰しない人を罰するという仕組みを導入して2次のフリーライダー問題を解決し、秩序生成を説明する有力なモデルである。アクセルロッドは得点が高い戦略ほど繁殖するという進化論的なシミュレーションを行い、5回中5回秩序が成立するという結果を得た。しかし、彼のモデルでは、初期戦略が中央に集まってしまう。そこで、われわれは初期戦略および突然変異率を変化させて、秩序成立の可能性を調べた。その結果、初期に罰する率が低いと秩序が成立しないこと、無秩序状態から秩序が成立する確率が突然変異率によって変化することがわかった。以上より、秩序成立、さらには社会発展を考える際には、進化論的なシミュレーションが有効であるといえよう。
  • 出口 弘
    1990 年 5 巻 1 号 p. 101-114
    発行日: 1990/04/01
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
     南方熊楠は,偉大な博物学者であり粘菌学の大家であると同時に日本民俗学の生みの親の一人として広く知られている.しかし,彼の学際的な学の背後にあった方法論としての自然哲学そのものについては,殆ど関心は払われてはこなかった.本論では,我々は,南方熊楠の自然哲学に着目し,それを思想史的な観点からではなく,今日の諸学の錯綜し方法論の混乱する学の状況に於ける生きた思想として再把握することを試みる.彼の社会科学に関する科学方法論と数理的学についての卓見は,時代の中で抜き出ていたが故に日の目を見ることはなかった.主体を含む複雑なシステムとして社会システムを捉えその構造変動を含むモデル作成の為の確固たる方法論的基盤を築く必要がある今日の社会科学にとって,南方の思想と方法論は,時代を越えて有益な示唆を与えてくれるのではないかと期待する.
展望論文
  •  
    スミス ハーマン W.
    1990 年 5 巻 1 号 p. 115-130
    発行日: 1990/04/01
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
     アメリカの社会科学者の中で、社会理論の展開を支援するためにIBM-PC用のプログラムを作ったり利用したりしている人の数は増えつつある。本論文では、現在の到達水準を示すいくつかのソフトウェア・プログラムを紹介して、アメリカにおけるコンピュータ志向の社会科学理論が目指している方向を明らかにする。最初に紹介するINTERACTは、感情統御理論(Affect Control Theory)に基づき、数学的な等式を用いて感情と役割の変化に関する予測を行なうものである。次に、より従来的な知識の体系化に基づく2つのエキスパートシステムを紹介する。第1の、PLACECONは、児童福祉の事例の措置について相談相手をつとめる実験的なシステムである。第2の、EX-SAMPLEは、標本抽出の作業に含まれる意思決定過程をルーチン化したものであり、調査に携わる研究者を支援する。典型的なエキスパート・システムの多くは、本物のエキスパートにとって注目に値するものではない。しかしETHNOは、プール代数に基づく適用範囲の広いプログラムであり、社会的相互作用の分析を体系化する際に非常に役立つ。ETHNOは、非計量的な研究(一連の出来事や対象物の構造もしくはダイナミックスの底に潜む必要条件や十分条件を明確化すること)を支援する。最後に紹介するSOARは、上記のプログラムすべてが持つ最大の問題点の1つを克服している。すなわち、プログラムに組み込まれているルールがどれも適用できない場合や、適用可能なルールが多いため競合している場合に生じる問題に対処することができるのである。重要な点は、人間がいなくても学習できる人工知能システムへの道をSOARが示していることである。以上のプログラムはそれぞれ、従来のコンピュータ・プログラムでは不可能であったような、理論を形成したり展開したりするための革新的な方法を示しているのである。
研究動向
書評
お詫びと訂正
feedback
Top