本稿においては、社会学の基礎理論にとって意味の問題を適切に扱うことが必要である、という認識に基づいて、社会意味論と名づけることができるような社会学理論の構築の可能性について論じられる。社会意味論にとっての方法論的課題は、主観主義/客観主義、個人主義/集合主義という対立の問題を解くことであり、意味現象の科学的認識のために客観主義が選択され、意味現象のダイナミズムを記述・説明するために個人主義と集合主義の統合が選択される。理論的課題は、意味概念そのものの位置づけ、個人の主体性の位置づけ、過程論や変動論の位置づけの3つが設定される。
個人の主観に準拠した場合、意味構成とは主観の志向性と世界との関係であり、世界は時間的、空間的、様相的という3つの次元で分節化された事物や事象の差異関係と等置関係によって意味を付与される。意味構成過程は同時にコミュニケーション過程でもあり、とくに相互に志向しあう自己と他者の関係の中から意味の社会性という契機が出てくるが、意味の社会性の問題を解くためには、新しい統合的メディア論の構築が必要である。さらに意味の社会性の問題は、社会的秩序の問題と関係づけられ、意味の妥当性と正統性という2つのレベルを区別することによって、秩序形成のダイナミズムの解明への手がかりをつかむことができる。
抄録全体を表示