理論と方法
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論文
秩序問題への進化論的アプローチ
─メタ規範ゲームの展開─
織田 輝哉
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1990 年 5 巻 1 号 p. 81-99

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抄録
 「秩序問題」は、社会学の基本的な問題の一つである。しかし、秩序がいかにして維持されるかは一定の説明を与えられても、秩序がいかにして生まれてくるかについては十分取り上げられてきたとはいえない。ここでは、秩序の生成問題を社会的ジレンマ状況における協調の成立としてとらえて検討していく。反復囚人のジレンマではしっぺがえし戦略により秩序が成立するが、n人の場合はしっぺ返しは有効でない。また「選択的誘因」はそれを与える主体自体が公共財であり2次のフリーライダー問題を招来する。これに対して、アクセルロッドの「メタ規範ゲーム」は、罰しない人を罰するという仕組みを導入して2次のフリーライダー問題を解決し、秩序生成を説明する有力なモデルである。アクセルロッドは得点が高い戦略ほど繁殖するという進化論的なシミュレーションを行い、5回中5回秩序が成立するという結果を得た。しかし、彼のモデルでは、初期戦略が中央に集まってしまう。そこで、われわれは初期戦略および突然変異率を変化させて、秩序成立の可能性を調べた。その結果、初期に罰する率が低いと秩序が成立しないこと、無秩序状態から秩序が成立する確率が突然変異率によって変化することがわかった。以上より、秩序成立、さらには社会発展を考える際には、進化論的なシミュレーションが有効であるといえよう。
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© 1990 数理社会学会
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