理論と方法
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特集 階層・移動研究の展望
社会階層と文化的再生産
片岡 栄美
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1992 年 7 巻 1 号 p. 33-55

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抄録
 本研究では、文化による象徴的な支配のメカニズムが人々の日常生活の階層的リアリティを構成し、階層構造の再生産にとって重要な役割をもつことを解明する。このために文化資本を幼少時の文化的環境(相続文化資本)と現在の文化的活動(文化資本)の2つで測定する。その結果、次の知見を得た。(1) 男女で文化的活動の構造は異なる。(2) 正統文化への関与の意味は、男女で異なる。(3) 文化資本の再生産プロセスが、社会階層の再生産および教育的再生産にとって重要な媒介プロセスとなっている。さらに、LISRELの構造方程式モデルによる男性データを用いて得られた主な知見は、(4) 相続文化資本は、出身階層により差がある。(5) 相続文化資本は、階級のハビトゥスとして、学歴および成人後の「正統」文化的活動を左右する重要な要因である。すなわち家族から幼少時に相続した文化資本の効果は、成人後の文化資本を規定し、ここに文化的再生産メカニズムが存在する。(6) このメカニズムにおいて、教育は上層階層の家庭環境に由来する文化的能力を承認する役割を果たしている。
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© 1992 数理社会学会
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