理論と方法
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論文
都市流入と社会移動
―キャンベラの事例―
野辺 政雄
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1992 年 7 巻 2 号 p. 2_105-2_122

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抄録
 一般に、都市の急激な人口増加は、他の地域からの若者の大量流入によっている。本稿の目的は、(1) そうした流入者の出身地の人口規模は、その人が都市で達成した社会階層上の地位にどのような影響を及ぼしているか、(2) 流入者は都市の社会階層上のどの地位を占めているかを、オーストラリア連邦の首都キャンベラのデータで検討することである。結婚あるいは同棲関係にある55歳以下の女性を対象に調査を実施し、次の4つの知見を得た。(1) 流入者の出自した社会階層・社会的背景は、キャンベラ出身者のそれと違いがなかった。(2) 流入者の出身地の人口規模が大きいほど、その人は学歴、配偶者の職業威信スコア、収入で高かった。そして、人口規模の最も小さい町村出身の流入者も、キャンベラ出身者よりも配偶者の職業威信スコアで高かった。ただし、両者は学歴、本人の職業威信スコア、収入で違いはなかった。(3) 流入者の出身地の人口規模は、学歴と配偶者の職業に直接的な効果を及ぼしていたけれども、その収入に対する効果は間接的であった。(4) 流入者が上昇移動し、キャンベラの上層階層を形成するのに対し、キャンベラ出身者は下降移動し、その下層階層を構成する傾向があった。これは、キャンベラが政治都市であることによって説明できる。
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© 1992 数理社会学会
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