1994 年 9 巻 2 号 p. 143-156
本稿では、公平感の階層意識研究の中で占める位置を明らかにすることを試みた。位置づけの基点は、階層化のルールの正当性評価としての公平感が、必然的に階層構造の維持に関わる点にある。このように公平感を位置づけるとき、階層意識研究としての公平感研究の最終ゴールは、人々にとっての「望ましい」社会像を、そのイメージ形成のスコープの広さを視角にいれつつ提示するところにある。だとすれば、階層研究としての公平評価研究は、単に評価の帰結としての公平感と階層的地位との関連を探るのみでは不十分であり、評価のメカニズム―階層化のルールについての認知と評価基準の双方が明らかにされなければならない。認知と評価基準の共有の様態が、現状維持/否定のイデオロギーの形成に基盤を提供すると考えられるためである。現状を否定するイデオロギーの形成と、新しい不平等=領域別不公平感との関連も論じた。