【目的】福祉制度の利用は, てんかんを持つ小児が地域で安定して生活するための前提条件であるが, その利用実態は不明の点が多い. そこで本研究では, てんかんを持つ小児の福祉制度の利用実態を後方視的に明らかにすることとした. 【方法】岡山大学病院小児神経科を2015年10月~2016年10月の間に受診した当該時年齢0~16歳のてんかん患者597例を対象とした. 【結果】小児慢性特定疾病医療費助成 (小慢) を100例 (16.8%), 自立支援医療 (精神通院医療) を67例 (11.2%), 重症心身障害者医療費助成を63例 (10.6%) が利用していた. 小慢はWest症候群114例中55例 (48.2%), Lennox-Gastaut症候群30例中13例 (43.3%), Dravet症候群13例中6例 (46.2%) が利用していた. 一方, 発作頻回の非特発性てんかん66例中26例 (39.4%) は, 7制度いずれも利用していなかった. 【結論】各種制度の該当対象者でも未申請の患者が相当数あり, その背景には乳幼児医療費助成等との重複が推定された. 一方, てんかんが重症にも拘わらず制度対象に含まれない患者もいることが把握された. また新規申請や居住する県外での利用等患者・家族にとって福祉制度は必ずしも利用しやすくないと思われたため, 今後は手続きに係る負担を軽減する仕組みづくりを検討する必要がある.