脳と発達
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原著論文
重症心身障害児(者)の流涎過多による生活の支障,口腔/咽頭分泌物過多による呼吸障害に対するscopolia extract(ロートエキス)の有用性
須貝 研司麻生 雅子伴 さとみ新井 奈津子前田 あき江川 文誠
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2022 年 54 巻 6 号 p. 414-420

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抄録

 【目的】重症心身障害児(者)〔重症児(者)〕の流涎過多,口腔/咽頭分泌物過多は,衛生面や呼吸障害の原因として大きな問題で介護負担も大きいが,適切な治療法はない.ロートエキスは胃十二指腸潰瘍,胃炎の薬で副交感神経を抑制するベラドンナアルカロイドを含むので唾液の減少も期待でき,先例もあり,適応外使用だが介護者の要望で流涎過多,分泌物過多に試みた.【方法】入所の重症児(者)の介護者(家族,看護師,生活支援員)から流涎過多による生活支障,分泌物過多による呼吸障害の改善を求められた.消化性潰瘍・胃炎の薬で適応外使用だが本剤があること,用法,効果と副作用,対処法を説明し,介護者の同意を得た入所者に1.1~3.5mg/kg(平均2.2mg/kg)投与した.流涎ほぼ消失,痰の吸引量半減以上を有効とし,効果を後方視的に調査し,病棟介護者の介護負担への影響も調査した.【結果】有効は45/47例(流涎過多23/24例,分泌物過多22/23例)で,副作用は胃残量増加4例,腸蠕動低下1例,痰の粘稠化1例であったが,減量や中止で改善し,中止は副作用2例を含む6例で,便秘は増強10例,改善4例であった.流涎,分泌物の減少は更衣や清掃,吸引回数の減少など介護者の業務軽減と時間的・精神的余裕をもたらし,患者も介護者もQOLが改善した.【結論】本剤は胃十二指腸潰瘍,胃炎の薬で適応外使用ではあるが,重症児(者)の流涎過多による生活の支障,分泌物過多による呼吸障害に有用であった.

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© 2022 一般社団法人日本小児神経学会
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