脳と発達
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超音波Doppler法による小児期の脳血行動態に関する研究
村上 暢子
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1988 年 20 巻 4 号 p. 279-287

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抄録

健常な小児および成人306名について超音波Doppler法を用い, 前大脳動脈 (ACA), 中大脳動脈 (MCA) の血流を測定し以下の結果を得た.
1. 生後24時間以内では, PI (Pulsatility Index) はACA, MCAとも著明に変化した. 出生直後はPIは低く, 以後上昇して生後1-3時間で最大値となった.
2. 生後24時間以後のPIは年齢による変化に乏しく, 一定値となる時期はACAでは生後24時間, MCAでは生後6カ月であった.
3. 生後24時間以内におけるMCAの平均血流速度はPIとは逆に出生直後は高く, 生後1-4時間で最低値となり, その後再び増加した.
4. 生後24時間以後, MCAの平均血流速度は年齢とともに変化を示した. すなわち新生児期が最も遅く, 乳児期から幼児期にかけて増加し, 4歳で最高となったのち20-30歳まで減少を続けた.
5. 連続波Doppler血流計とpulsed Doppler血流計によるACAのPIの測定値には差異をみとめなかった.
以上より正常人におけるACA, MCAのPIと, MCAの平均血流速度の各月, 年齢別標準知見を明らかにし得た. 本研究知見は臨床応用の基礎となり得ると考える.

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© 日本小児小児神経学会
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