抄録
本研究の目的は,断層崖に沿って発達する石灰岩堤において,実際に力学的硬度を計測し,ケースハードニング(表面硬化作用)が生じているかどうかの検討を行うことである.沖縄島南部にみられる石灰岩堤を調査対象とし,断層崖表面と新鮮な石灰岩が露出する切取面において,シュミットロックハンマーによる反発硬度試験を実施した結果,断層崖でケースハードニングが起こっていることが確認された.断層崖では炭酸カルシウムの再結晶が広範囲に観察されたことを踏まえ,考察を行ったところ,ケースハードニングによる表面硬化には,炭酸カルシウムの再結晶が関与し,岩盤表層に緻密で硬質な層が形成されている可能性が示唆された.この断層崖表面におけるケースハードニングによる物性変化は,溶食速度を遅くする効果をもたらし,石灰岩堤の形成に寄与すると推察される.