抄録
現在は大阪市平野区に所在する、摂津国住吉郡西喜連村において、新たに一群の古文書が発見された。本稿は、そのうち江戸時代初期の年貢史料の紹介と分析を通じて、年貢収納を中心とする、この時期の西喜連村の状況を考察しようとするものである。年貢の収納については、『新修大阪市史』で分析された近隣村落と共通する部分もあるが、「五分一銀納」から「三分一銀納」への移行時期や、年貢請負責任が庄屋等の個人から名請人全体へと移行したことを示す文言の初出年代など、異なる点も見られる。また、この時期には、自然災害に起因する年貢の減免がしばしば行われている。この点に注目すると、村の経営を維持するために最低限必要な「村の取り分」が、領主側にも意識されていたことがうかがえる。