2025 年 3 巻 論文ID: 2025-002
入院時重症患者対応メディエーター(以下,重症メディエーターと記載)として代理意思決定を支える家族介入の実際の事例を振り返り,その課題を検討した.
救急搬送され,病態が回復しないまま死亡に至った事例に重症メディエーターとして関わった.介入当初,医療機器に依存する延命は望まないという患者の推定意思があったが,家族は患者の意思を受け入れられずにいた.重症メディエーターは,患者の病状や治療方針の確認と家族の揺れ動く思いを聞き,必要な他職種の介入へと繋げた.患者本人と一緒に過ごしたいという家族の思いから一般病棟で家族が付き添い,最終的に患者の推定意思を尊重し,家族も代理意思決定者として納得のできる看取りとなった.
今後の課題は,介入開始が病日5日目と遅れたため,より早期に介入できる体制の整備,家族との面談時間を確保するための病棟への情報共有や支援体制の強化,ICU・HCU退室後の患者家族への継続的な情緒的サポートが挙げられる.重症患者と家族の意思決定支援に関わる役割の一つとして,施設における重症メディエーターの体制強化と役割の周知が必要である.