抄録
わが国における急速な高齢化は、循環器疾患のさらなる増加をもたらすと予想されており、高齢者の循環器疾患に対する予防策を講じることは重要な課題である。加齢に伴い心機能は低下するがそれは主に左室拡張機能であり、左室収縮機能は保たれることが報告されている。左室拡張機能の低下は、駆出後半に上昇する後負荷による左室弛緩速度の延長が一因となるとされている。温浴は後負荷軽減をもたらすことから、心疾患者に対する後負荷軽減療法として活用されている。しかし健常高齢者に対する温浴の効果について検討した研究は少ない。そこで本研究は健常高齢者の左室心機能に対する温浴の効果を検討することを目的とした。対象は健常高齢者17名とコントロール群である若年者18名とした。40度の湯温にて15分半身浴を行い、温浴前・温浴中・温浴後の心機能の変化を比較検討した。温浴は左室収縮機能の増強を認めたが、加齢により低下した左室拡張機能に対しては明らかな効果をもたらさない可能性が示された。温浴による収縮機能増強に見合う拡張機能の改善を認めなかったことは、高齢者の左室収縮弛緩連関が低下している可能性を示した。