日本では冬季に入浴中の突然死や溺死が著しく増加することが知られており,山形県はその発生頻度が高い寒冷地域である.しかし,県内における季節別・地域別の入浴行動の個人レベルの実態については,これまで十分に検討されていない.そこで,山形大学医学部附属病院において待機的手術を予定していた患者を対象にアンケート調査を実施した(2024年6月1日~2025年1月31日).山形県在住の1,398名(村山1,024名; 置賜229名; 最上84名; 庄内61名)を分析対象とした.参加者は,夏季および冬季における入浴頻度・形式,浴槽温度,浸漬時間,浴室滞在時間,ならびに浴室・脱衣室の寒さの体感について回答した.地域差の検討には一元配置分散分析およびカイ二乗検定を,季節差の検討には対応のある検定を,共変量調整後の関連の検討には参加者レベルのランダム切片を設けた混合効果モデル(年齢・性別・同居人数・入浴嗜好・地域を調整)を用いた.主要な入浴行動について,いずれの季節においても明確な地域差は認められなかった(すべてP > 0.05).個人内比較では,浴槽温度は夏季39.9 ± 1.5°Cから冬季41.2 ± 1.3°C(平均差1.3°C; n = 1,231; P < 0.001),浸漬時間は9.7 ± 8.3分から12.9 ± 9.2分(平均差3.2 分; n = 1,165; P < 0.001),浴室内滞在時間は20.9 ± 11.2分から24.9 ± 12.4分(平均差4.0 分; n = 1,290; P < 0.001)へとそれぞれ有意に増加した.浴槽への浸漬を行うと回答した割合は64.1%から90.5%へと増加し(n = 1,254; P < 0.001),寒さを体感する割合も著しく上昇した(浴室:1.5%から60.0%; 脱衣室: 3.2%から63.4%; ともにP < 0.001).調整済み混合効果モデルでは,冬季は浴槽温度の上昇(1.3°C; 95% CI 1.3~1.4),浸漬時間の延長(幾何平均比 1.4; 95% CI 1.4~1.5),浴室内滞在時間の延長(幾何平均比 1.2; 95% CI 1.2~1.2)と有意に関連していた(すべてP < 0.001).傾向スコアマッチングによる感度分析では,冬季に浸漬した成人において,置賜地域の浴槽温度が村山地域よりもわずかに高く(0.34°C; 146ペア; P = 0.011),その他の比較では有意差は認められなかった.浴槽温度および入浴時間は,山形県全域で冬季に著しく上昇・延長する一方,主要な入浴行動の地域差は小さかった.冬季の予防対策は県全域で実施すべきであり,安全な浴槽温度の保持,長時間浸漬の回避,ならびに浴室・脱衣室の保温が重要である.
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