日本温泉気候物理医学会雑誌
Online ISSN : 1884-3697
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早期公開論文
早期公開論文の9件中1~9を表示しています
  • 中村 壽志
    論文ID: 2333
    発行日: 2020年
    [早期公開] 公開日: 2020/08/07
    ジャーナル フリー 早期公開

      【目的】足部に対する温熱療法は,柔軟性や立位バランス能力などの改善が報告されている.本研究の目的は,足底加温による静的・動的バランス能力の効果を検証し,足部皮膚温・感覚検査・足底柔軟性検査からその関与する要素を確認することである.

      【方法】健常成人30名を対象に,フットヒーターで足底を15分間加温した.加温・非加温中に深部体温(足背部第1~2中足骨頭間,足背部第4−5中足骨頭間)・足部皮膚温(右左中足骨頭外側),加温・非加温の前・後・10分後に足底皮膚温(第1・第5中足骨頭下・踵)・Y Balance Test(以下,YBT)・片脚立位重心動揺検査,前・後に触覚検査・振動覚検査・足底接地面積検査,母趾伸展可動域検査(以下,母趾伸展角度)を行った.また,温度以外の項目は変化率を算出した.反復測定分散分析を用いて測定値を,Wilcoxonの符号付順位検定で変化率を比較した.

      【結果】深部体温・足部皮膚温・足底皮膚温は,加温により有意な温度上昇を認めた.YBTは加温および非加温条件で前値と比較して後値・10分後値は有意に到達距離を伸ばした.母趾伸展角度は加温条件で前値と比較して後値は有意に角度が拡大した.片脚立位重心動揺検査・触覚検査・振動覚検査・足底接地面積検査に有意差を認めなかった.YBTと母趾伸展角度の変化率は,非加温条件に対して加温条件は有意に変化が大きかった.

      【考察・結語】足底を加温することで動的バランス能力の指標となるYBTを増大させる効果を確認できた.関与する要素として,足底皮膚温の上昇と母趾伸展角度の拡大を認めた.片脚立位重心動揺検査と感覚検査と足底接地面積検査に変化を認めず,関与する要素としては見いだせなかった.YBTの増大および母趾伸展角度の拡大から,足底を加温した後に動的な伸張刺激が加わることで足底柔軟性を向上させることが,バランス能力に寄与することが示唆された.

  • 嶋 良仁, 渡邉 あかね, 井上 暢人, 國友 栄治, 丸山 哲也
    論文ID: 2330
    発行日: 2020年
    [早期公開] 公開日: 2020/07/28
    ジャーナル フリー 早期公開

      【目的】「冷え」は正常な体温であるにもかかわらず,手または足が冷えている状態である.疾病の有無に関係なく,高齢者を中心に多くの人がこの「冷え」に悩まされている. 冷えを和らげる方法のひとつに使い捨てカイロで手を温めることがあるが,この方法では手が塞がり日常の作業を妨げる.そこで,カイロで上肢の別の部分を加熱することで,手の冷えを緩和できるかどうかを調査した.

      【方法】インフォームド・コンセントの後,脈管異常の指摘がこれまでない冷えを自覚する30名に頸部,肘,手首の加温の検討を行った.18名はそれぞれ1週間のインターバルをあけて3ヶ所を指定された順に1週間ずつカイロで加温を行った.残りの参加者は,カイロ固定用ホルダーの影響を観るためにホルダーだけを装着した.すべての参加者は,10cmのvisual analog scaleによる手の冷え評価を連日記録させた. 同様にカイロやホルダー装着が日常作業に差し障ったかを連日評価させた.1週間の加温の治療効果を観るために,カイロまたはホルダーのみを使用した期間終了翌日に,サーモグラフィーとlaser speckle contrast analysis(LASCA)を使用して,24℃20分間の室温順応後に両手の表面温度と血流を計測した.

      【結果】頸部と肘部のカイロ加温中に冷えVASの有意な低下が観察された.日常への差し障り度評価は3ヶ所間で差がなかった.手の表面温度・血流はカイロ(あるいはホルダーのみ)の使用で上昇は観察されなかった.

      【結語】手を温めなくても手の冷えを改善できることと,加温部位によってその効果が異なることが判明した.この研究は,「冷え」を改善する新しい方法につながると考えられる.サーモグラフィー等の客観的評価は,外気温等の測定条件の影響が非常に大きく,評価方法の検討が必要と考えられた.

  • 中村 毅, 阿岸 祐幸
    論文ID: 2332
    発行日: 2020年
    [早期公開] 公開日: 2020/07/17
    ジャーナル フリー 早期公開

      ドイツの温泉保養地では,土地固有の特徴ある自然資本の経験的な生体に対する効果を医学・気象学・化学などの科学的手法によって検証し,治療手段として承認を得,健康維持,治療や疲労・ストレスからの回復に提供している.自然資本は土壌からの素材である療養泉・ガス・ぺロイド(使用法は浴用,湿布など日本も欧州も差異はないが,欧州ぺロイドの物理的性質は日本に比較して劣り,有機質を多く含有させるため,処理を施す点が異なる)のほか,気候や海洋からの素材も含み,種類や質によって温泉保養地の種が規定されている.その特徴により利用者の目的に応じた場所を選択できるシステムが構築され,健康増進に効率的に活かされている.

      自然資本が豊富であるにもかかわらず活用が十分ではないと思われる日本の現状に対し,ドイツ温泉保養地の近年の動向について,黒い森地域を主とする伝統ある温泉・気候保養地を参考にすべく現地視察体験し現状について学んだ.

      視察を行ったいずれの場所もドイツ温泉協会,ドイツ観光協会から認定されている温泉・気候保養地であったが,特にBad Wildbad, Keidel Mineral-Thermalbadの2つの温泉保養地は,医学的治療,ツーリズム等の提供構造を維持しながら,土地構造,自然素材の長所を活かし,トレンドや感動の要素を組み込み地域社会,温泉地の活性化につなげていた.

      日本とドイツでは温泉地自体の構造,環境,制度などの相違もあり,ドイツでは,補完,代替医療が広く行われ一部公的治療費が支払われるが,プライベート保険を用いて保険償還が行われている(高山真,他:ドイツ4ヶ所の医療施設における統合医療の現状,日東医誌 Kampo Med, 2012; 60(4): 275-282).ドイツの現状をそのまま応用するには容易ではないが,黒い森地方に劣らない量,多様性のある自然資本を所有する日本においても健康増進へのさらなる活用可能性があると考える.ドイツ温泉保養地の取り組みはその方向性の一端を示してくれるのではないか.

  • 皆川 翼, 大久保 健作, 田中 信行
    論文ID: 2329
    発行日: 2020年
    [早期公開] 公開日: 2020/05/15
    ジャーナル フリー 早期公開

      【背景と目的】冷え性は女性に多く,寒冷時に手指,下腿等に強い冷感を自覚するものである.その病態から末梢静脈の過収縮による血液うっ滞を疑い,寒冷時の舌下及び手足末梢の体表温,静脈血ガス分圧の変化(pO2,pCO2)と,温熱で増加する一酸化窒素(NO)が血管で生成する環状グアノシンーリン酸(cGMP)分解酵素PDE-5の阻害薬タダラフィル(TDF)の効果を検討した.

      【対象と方法】対象は特別な疾病の既往や服薬がなく,閉経に至っていない50歳以下の女性17名である.問診で日中や夜間の冷え性状の有無・部位について確認し,冷え性のある女性(以下,冷え性群)10名(20~42歳,平均31.0±8.8歳)とない女性(以下,冷え性なし群)7名(22~33歳,平均26.4±3.7歳)に分けて検討した.測定項目はBMI,血圧,心拍,舌下温,体表温,静脈血ガス分圧,指尖動脈血酸素飽和度である.研究は11月から3月初旬の外気温12°C以下の時に行い,測定は室内(約23°C)と室外の寒い風除室(約12°C)で行い,その後,TDF錠10mgを内服させ,翌日の同刻に再度測定を行った.

      【結果】両群の指尖動脈血酸素飽和度は,室内,室外,TDF内服後とも差はなかった.室内では舌下温,静脈血ガス分圧の差もなかったが,室外では冷え性群の体表温の低下,静脈血pO2低下,pCO2上昇が大きい者が多かった.TDF内服後は,寒い室外での舌下温と体表温低下度は両群ともに改善するが,冷え性群での改善が大きかった.

      【考察】指尖動脈血酸素飽和度の正常から,冷え性は心肺・動脈系の障害ではなく,寒い室外での著明な体表温低下や末梢静脈血pO2の低下,pCO2の上昇から,寒冷による末梢静脈,または動静脈吻合(AVA)の過収縮による血液うっ滞が原因と思われる.また冷え性者におけるTDF内服の効果から,血液うっ滞におけるNO,あるいはcGMPの関与が示唆された.

  • 藤本 和弘
    論文ID: 2328
    発行日: 2020年
    [早期公開] 公開日: 2020/01/06
    ジャーナル フリー 早期公開

      温泉地の空間構造が変容した現在においては,長期滞在にふさわしい寛ぎ空間の創出が求められている.環境省の「新・湯治」推進プランにおいても,温泉地の周辺環境を含めた地域資源を活用した空間価値や体験価値を付加した寛ぎ空間の創出が求められている.さらに,ストレス社会といわれる現代においては,「温泉地の外部環境との良質なコミュニケーションの存在がストレスを解消する」という見方もできる.このことは,温泉地の外部環境が長期滞在のための寛ぎ空間として活用されている状況があるかどうかに関心を持たせる.

      そこで,「新・湯治」政策の先進的取り組みを進める温泉地として位置づけられている国民保養温泉地において,長期滞在需要を高めるためにどのような取り組みが行われているかを調査した.本報告では,るり渓高原温泉,浜坂温泉,梅ヶ島温泉,畑毛温泉,平湯温泉,田沢温泉,鹿教湯温泉,一里野温泉における取り組み状況を調査し報告する.その結果から,滞在需要を高めるプランづくりには5つの方法があることを明らかにした.これらの方法は組み合せも可能であり,温泉地の外部環境を分析し,長期滞在にふさわしい組み合わせができれば,長期滞在需要を高められる可能性があることを調査事例から明らかにした.

      そして,当該温泉地とその周辺の自然,文化歴史資源を含む外部環境を活用し,多様な散策やウォーキングコースとしてプランづくりできるかが,長期滞在の可能性を高めることになると結論づけた.

  • 深川 恵理, 遠藤 文康, 京野 陽子, 服部 一紀
    論文ID: 2327
    発行日: 2019年
    [早期公開] 公開日: 2019/11/27
    ジャーナル フリー 早期公開

      53歳タイ在住日本人男性.前立腺癌に対し当院泌尿器科でフォローされていたが,PSA上昇傾向あり,2015年6月に病勢評価目的の前立腺生検を企画され,入院2日前に帰国した.入院前日に術前検査として血液検査を施行したところ,CK 13,631IU/Lと異常高値が判明した.翌日の再検査ではCK 29,836IU/Lと更に上昇を認め,血清ミオグロビン 3,289.0ng/mL,尿中ミオグロビン 26,000ng/mL,CKアイソザイムはMM型が100%であった.後の問診により,帰国後入院するまでの2日間に公共温泉施設で電気風呂に入浴していたことが判明した.製造業者の推奨する電気風呂の入浴方法は「3分以内,1日2,3回」とされているところ,本症例は入院2日前に30分,1日前に60分と想定を遥かに超える長時間の入浴を行っていた.経過中腎機能障害は認めず,予定通り生検を施行した上で安静及び補液にて経過観察とし,CK値は入院2日目の42,355IU/Lをピークに改善傾向となり,入院5日目に5,979IU/Lまで低下を確認したところで退院となった.医中誌Webにおいて「電気風呂」の検索結果はわずか3件で,うち2件がCK上昇に関するもの,うち1件は電気風呂により植込み型除細動器が誤作動したという報告であった.過去の報告では入浴時間が長いほどCKの上昇を認めた.長時間の電気風呂の入浴は横紋筋融解症を来し,重篤な結果に至る可能性も懸念されることから,適正な入浴時間の啓発が必要である.

  • —浸漬方法・温度の違いから—
    鈴木 知明, 渡辺 修一郎
    論文ID: 2325
    発行日: 2019年
    [早期公開] 公開日: 2019/11/22
    ジャーナル フリー 早期公開

      【目的】家庭の浴槽での溺死者は年々増加傾向にあり,そのうちの約9割が65歳以上の高齢者である.いきなり全身浴するよりまずは半身浴し,一定時間経過後に全身浴とした方が循環動態に及ぼす影響が小さいのではないかという仮説を実証することを目的とした.

      【方法】地域在住の健常高齢者,男性10名(70.3±4.0歳)を対象として,6分間の全身浴と3分間の半身浴後に3分の全身浴(計6分間)の2パターンの浸漬方法で,湯温39℃と41℃の場合の入浴を実施した.測定項目は収縮期血圧(SBP),拡張期血圧(DBP),脈拍(PR),酸素飽和度(SpO2),前額皮膚温とし,着衣安静坐位時,入浴後1分以内,2分後,3分後,5分後,出浴直後,安静坐位5分後の7回計測した.あわせて主観的温度感覚,快適感も口頭にて確認した.

      【結果】SBP(p=.010),DBP(p=.019)ともに入浴条件と測定時点の交互作用が有意であった.SBPは段階的浸漬の有無にかかわらず温度の影響が大きく,41℃では出浴直後の血圧低下が著しかった.DBPは41℃において全身浴のみの入浴の場合は,半身浴後の全身浴に比較し入浴中の血圧低下が著しかった.

      【考察】SBPは41℃では段階的浸漬の有無にかかわらず出浴直後の低下が著しかった.20mmHg以上低下しており起立性低血圧と同様の病態が生じていると考えられる.さらに,DBPも41℃の湯温において全身浴のみの入浴を行うと起立性低血圧時の変化に相当する10mmHg以上の低下がみられた.一方,半身浴後の全身浴では41℃においてもDBPの低下は10mmHg未満になっていることから,41℃の場合は先に半身浴をした方が急激な低下を抑制するといえる.

  • 森本 佑子, 田辺 雄一, 堀 天明, 宮内 勇貴, 佐藤 麻紀, 工藤 道誠, 菅屋 潤壹
    論文ID: 2314
    発行日: 2019年
    [早期公開] 公開日: 2019/10/25
    ジャーナル フリー 早期公開

      健康なボランティアの前腕浴における皮膚血流に対する炭酸ガスおよび乳化油剤の影響を測定した.浴湯中に炭酸ガス(60ppm)のみ,乳化油剤(10ppm)のみ,炭酸ガスおよび乳化油剤を溶解させた前腕浴において,炭酸ガスと乳化油剤の併用は,炭酸ガス単独にくらべて皮膚血流量を有意に上昇させた.乳化油剤が炭酸ガスの経皮吸収を高めた結果,炭酸ガスの皮膚血管に対する実効濃度が高くなった可能性が考えられた.

      さらに,炭酸ガスと乳化油剤を組み合わせた入浴剤を作製し,健常成人を対象に,2週間の連用が発汗に及ぼす影響を調べた.連用後,入浴剤群では,安静時の鼓膜温が低下傾向を示した.発汗テストによる体温変化は連用前と同等であったが,発汗量は有意に増加した.鼓膜温および発汗量,発汗波頻度を用いた解析から,発汗量の増加は,発汗中枢を介したものであることが示された.コントロール群では,これらの変化は認められなかった.以上の結果から,乳化油剤を配合した炭酸入浴剤が発汗機能に有益な効果を有する可能性があることが示された.

  • —視覚障害の有無による指導方法の違い—
    星 慎一郎, 矢倉 千昭, 根地嶋 誠
    論文ID: 2315
    発行日: 2019年
    [早期公開] 公開日: 2019/08/09
    ジャーナル フリー 早期公開

      【目的】あん摩マッサージ指圧師(以下,あマ指師)養成施設における腰痛予防教育の実施内容が,晴眼者対象と視覚障害者対象の施設種別によって違いがあるかを明らかにすることを目的に,全国の養成施設の昇降式治療台の使用の有無,腰痛予防教育の実施の有無などを比較検討した.

      【方法】方法は,あマ指師を養成する85施設を対象とし,調査用紙を郵送した.データの分析は記述統計から割合を算出した.施設種別と腰痛予防教育の実施の有無は,他の設問の回答に対してカイ二乗検定で比較した.

      【結果】調査用紙に回答した52施設中,晴眼者対象の8施設では腰痛予防教育を実施していたのが8施設(100%),視覚障害者対象の44施設では腰痛予防教育を実施していたのが22施設(50%)であった(p<0.001).無回答の1施設を除いた51施設中,晴眼者対象の8施設では昇降式治療台を使用していたのが1施設(12.5%),視覚障害者対象の43施設では昇降式治療台を使用していたのが43施設(100%)であった(p<0.001).昇降式治療台を使用していた44施設中,腰痛予防教育を実施していた23施設では,治療台の高さを指導していたのが23施設(100%)であった(p=0.008).昇降式治療台を使用していた44施設中,治療台の高さと施術姿勢の指導については,複数の施設で共通した指導方法がなかった.

      【考察】あマ指師養成施設では施術姿勢の指導を重視しているが,治療台の高さを指導することで腰痛予防に繋がると考えられている.体系的な腰痛予防教育を実施するためには,多くの養成施設で共通した指導方法が求められる.

      【結論】あマ指師は,晴眼者対象施設では昇降式治療台を用いる施設が少なく,視覚障害者対象施設では腰痛予防教育を実施する施設が半数に留まっており,腰痛予防教育の実施内容に偏りがあることが示唆された.

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