日本温泉気候物理医学会雑誌
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原著
無機塩含有人工炭酸ガス泉入浴が身体の柔軟性と筋硬度、自覚症に及ぼす影響について
下堂薗 恵二宮 宏二松元 秀次宮田 隆司衛藤 誠二渡邊 智石澤 太市谷野 伸吾川平 和美
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2011 年 74 巻 4 号 p. 227-238

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抄録

 無機塩含有人工炭酸ガス泉入浴(無機塩炭酸ガス浴:41°C、10分間の入浴で、無機塩類濃度を約64ppm、炭酸ガス濃度を160-180ppmに調整)が健常被験者の循環動態や身体の柔軟性と筋硬度、自覚症に及ぼす影響について淡水浴入浴および入浴なしと比較検討した。
 深部体温と皮膚血流は入浴後に有意に上昇し、それらの増加は無機塩炭酸ガス浴が淡水浴より有意に大きかった。
 無機塩炭酸ガス浴後の身体柔軟性は、淡水浴や入浴なしの対照と同様の結果でほとんど変化がなかった。僧帽筋の筋硬度は無機塩炭酸ガス浴、淡水浴共に、浴後15分および30分で低下したが、入浴無しでは変化が無かった。無機塩炭酸ガス浴、淡水浴共に浴後15分における僧帽筋の筋硬度は入浴前より有意に低下していた。広背筋における筋硬度は無機塩炭酸ガス浴、淡水浴共に、浴後15分および30分で低下したが、入浴無しでは変化が無かった。浴後15分および30分における広背筋の筋硬度は無機塩炭酸ガス浴においてのみ有意に低下した。
 無機塩炭酸ガス浴、淡水浴共に浴中の肩の等尺性運動によって僧帽筋の筋緊張の低下が得られ、その低下は淡水浴後より無機塩炭酸ガス浴後が大きかった。しかし、これらの変化は統計学的有意には至らなかった。
 入浴による自覚症の改善は、淡水浴および無機塩炭酸ガス浴の双方で得られたが、「筋肉の緊張」、「関節の動かしやすさ」、「リラックス感」の項目において淡水浴後より無機塩炭酸ガス浴後がより有意に改善した。
 淡水浴と比較して、無機塩炭酸ガス浴は筋緊張や自覚症の改善においてさらなる改善効果をもたらした。筋緊張への無機塩炭酸ガス浴のみの効果と等尺性運動との併用効果について確認するためには、さらなる研究が必要である。

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© 2011 日本温泉気候物理医学会
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