日本温泉気候物理医学会雑誌
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原著
介護予防としての運動プログラム・トレーニングとそれに併用する円皮鍼施鍼の包括的 QOL に及ぼす影響について
中村 満
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2012 年 75 巻 2 号 p. 95-111

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抄録
目的:本研究では高齢者における長期の運動プログラム・トレーニングの効果、および継続的にトレーニングを行っている高齢者に対する円皮鍼施鍼の併用が、高齢者のコンディショニング及び包括的 QOL にどのような影響を及ぼすかを検証した。
方法:対象者は 65歳以上の高齢者 40名で、本学の機能訓練教室にてトレーニングを 3年以上継続している者とした。この中で 3年間以上にわたり運動機能評価のできた 16名については、長期トレーニングプログラムの運動機能に及ぼす効果について検討した。
 トレーニングは、毎週 2回、3ヵ月を 1クールとし、3年間実施した。評価は、膝伸展力、開眼片足立ちを含む 10項目とし、これらの評価を1クール前後毎に行った。咀嚼力の評価は咀嚼力判定ガムを使用し、栄養摂取状況は連続3日間の食事内容をもとに計算した。
 円皮鍼は、28名を対象に足三里(ST36)と三陰交(SP6)の 2穴に貼付し、2週間継続した。評価は、唾液中コルチゾールとクロモグラニン A(CgA)濃度および SF-8TM とし、円皮鍼2週間施鍼前後で行った。
結果と考察:膝伸展力と開眼片足立ちの平均持続時間は有意な増加を示し、他の項目は変化しなかった。また、膝伸展力と咀嚼力および栄養摂取状況は正の相関を示した。一方、唾液中コルチゾールは円皮鍼2週間施鍼終了後でトレーニング前に比してトレーニング後で有意に減少した。しかし、唾液中CgAは変化しなかった。SF-8TM では身体的 QOL は向上し、精神的 QOL は上昇傾向を示し、「身体の日常役割機能」、「活力」、「全体的健康感」は改善した。
 以上のことから長期トレーニングプログラムは、高齢者の歩行能力とバランス能力を改善するとともに他の運動機能の低下を予防し、加えて咀嚼力と良好な栄養摂取状態を維持するうえで効果的である可能性が示されたことから、介護予防の有効な方法であることが示唆された。また、トレーニングに円皮鍼療法を併用することで心身の QOL 向上と主観的な健康指標の向上にも繋がったことから、長期にわたるトレーニングを継続させる有効な方法になり得ることが示された。
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© 2012 日本温泉気候物理医学会
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