日本温泉気候物理医学会雑誌
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原著
若年女性の冷え症に対する下肢への低周波鍼通電療法の効果—SF-8の下位尺度‘体の痛み’得点を指標とした比較検討—
坂口 俊二久下 浩史竹田 太郎小島 賢久宮嵜 潤二佐々木 和郎森 英俊
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2012 年 75 巻 4 号 p. 248-255

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抄録

目的:冷え症(血管運動神経障害)者を健康関連 QOL の一つである SF-8 の下位尺度 ‘体の痛み(BP)’ 得点で 2 群に分類し、下肢への低周波鍼通電療法(EAT)の効果を比較検討した。
方法:対象は冷え症を自覚し、体位変換試験(起立試験)により下肢血管反応に異常を呈した女性 20 名(平均年齢 20.6±2.5 歳)とした。EAT は週 1 回、計 5 回、左右三陰交(SP6)に 40 mm·20 号のステンレス鍼を約 15 mm 刺入して周波数 1Hz で 20 分間とした。評価には冷えを含む 14 症状の 6 件法と冷えの程度をVisual Analogue Scale(VAS)で回答する独自の評価票(冷え日記)を用いた。また、健康関連 QOL には SF-8 日本語版(スタンダード版)を用いた。
結果:対象者は、治療前の SF-8 の BP 得点が国民標準値 42.75 点より得点の低い(QOLが低い)L 群 12 名と得点の高い(QOL が高い)H群8名に分類した。VAS 値には両群間でEATによる有意な改善はみられなかったが、14 症状の合計得点は L 群で治療第2週から治療前に比べて有意に低下し、その効果は治療終了 1 カ月後まで持続していた。SF-8 の下位尺度では、L 群で VT の得点が治療前に比して治療終了 1 ヵ月後に、BP·MH の得点が治療前に比して治療後、治療終了 1 ヵ月後に有意に増加した。
結語:三陰交への EAT は冷え症者の全身症状および健康関連 QOL の改善に寄与し、その効果は健康関連 QOL が低い(BP が強い)ほど高いことが示唆された。

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© 2012 日本温泉気候物理医学会
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