日本温泉気候物理医学会雑誌
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原著
冷え感を有する健康人におけるカイロ加温の部位別検討試験
嶋 良仁渡邉 あかね井上 暢人國友 栄治丸山 哲也
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キーワード: 冷え, カイロ, 部位, VAS, 皮膚温, 血流量
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2020 年 83 巻 3 号 p. 105-112

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抄録

  【目的】「冷え」は正常な体温であるにもかかわらず,手または足が冷えている状態である.疾病の有無に関係なく,高齢者を中心に多くの人がこの「冷え」に悩まされている. 冷えを和らげる方法のひとつに使い捨てカイロで手を温めることがあるが,この方法では手が塞がり日常の作業を妨げる.そこで,カイロで上肢の別の部分を加熱することで,手の冷えを緩和できるかどうかを調査した.

  【方法】インフォームド・コンセントの後,脈管異常の指摘がこれまでない冷えを自覚する30名に頸部,肘,手首の加温の検討を行った.18名はそれぞれ1週間のインターバルをあけて3ヶ所を指定された順に1週間ずつカイロで加温を行った.残りの参加者は,カイロ固定用ホルダーの影響を観るためにホルダーだけを装着した.すべての参加者は,10cmのvisual analog scaleによる手の冷え評価を連日記録させた. 同様にカイロやホルダー装着が日常作業に差し障ったかを連日評価させた.1週間の加温の治療効果を観るために,カイロまたはホルダーのみを使用した期間終了翌日に,サーモグラフィーとlaser speckle contrast analysis(LASCA)を使用して,24℃20分間の室温順応後に両手の表面温度と血流を計測した.

  【結果】頸部と肘部のカイロ加温中に冷えVASの有意な低下が観察された.日常への差し障り度評価は3ヶ所間で差がなかった.手の表面温度・血流はカイロ(あるいはホルダーのみ)の使用で上昇は観察されなかった.

  【結語】手を温めなくても手の冷えを改善できることと,加温部位によってその効果が異なることが判明した.この研究は,「冷え」を改善する新しい方法につながると考えられる.サーモグラフィー等の客観的評価は,外気温等の測定条件の影響が非常に大きく,評価方法の検討が必要と考えられた.

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© 2020 日本温泉気候物理医学会
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