2021 年 84 巻 2 号 p. 87-92
背景:神経筋電気刺激(NMES)は,効果的なウォームアップ介入として注目されている.NMESは,筋肉パフォーマンスの指標である発達速度(RFD)の増加を示すが可動域(ROM)を増加させるかどうかはいまだに解明されていない. ROMは,筋腱単位(MTU)の剛性と筋伸展性の許容範囲の変化に起因する. MTU剛性が低下すると,筋肉のパフォーマンスが低下する傾向があることはよく知られている.したがって,ROM増加と筋肉のパフォーマンスを向上させるには,MTUの剛性を変更せずに,筋肉の伸展性に対する耐性を高める必要がある.この研究の目的は,ウォームアップとして使用される5秒間のMVICトルクレベルの20%でのNMESが,MTU剛性を変更せずに筋肉の伸張性に対する耐性の増加に続いてROMを改善するのに有効かどうかを調査することとした.
方法と結果:13人の健康な男性被験者に対して20%MVICレベルでのNMESを5秒間実施した.NMES前後に最大ROMと標準化されたトルク(30N)を備えたROMを測定した.最大ROMは,NMES介入側での介入前と比較して介入後は増加した.一方でNMES非介入側では有意な変化がみられなかった.さらに,NMES介入側,非介入側において標準化されたトルクを使用したROMに有意差はみられなかった.
結論:20%MVICで5秒間のNMESは,MTU剛性を変更せずに筋肉の伸張性に対する耐性を高めた後,ROMを増加するのに効果的であることがわかった.