日本温泉気候物理医学会雑誌
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温泉の温熱による糖化改善効果の検討—パイロット・スタディ—
志和 悟子永田 勝太郎大槻 千佳杉岡 哲也
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2022 年 85 巻 2 号 p. 59-66

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抄録

  目的:5日間の温泉治療による糖化反応および酸化バランス防御系を検討した.

  対象:対象は血糖値スパイクを呈した群(S群:5例)と非血糖値スパイク群(Non-S群:6例)であり,比較検討をした.

  方法:犬吠埼温泉「絶景の宿犬吠崎ホテル」に5日間宿泊し1日2回,1回20分,温泉入浴をさせた(温泉療法).その前後で糖化度を測定した.暗視野顕微鏡による赤血球変形を0から5までの6段階に分類し,変形の状態と最終糖化産物(AGEs値)の測定を行った.また,酸化ストレス(d-ROM値),抗酸化力(BAP値),潜在的抗酸化能(BAP/d-ROM比)も同時に測定した.

  結果:温泉療法前の赤血球像は,S群で悪化していたが,AGEs値に有意差はなかった.酸化バランス防御系についても両群に有意差はなかった.温泉療法前後の比較を行うと,赤血球像はS群では3°(3〜3)(median(IQR))から2(1〜2)へと有意に改善した.酸化ストレスもS群で,342 CARR U(334〜362)から314(303〜345)へと有意に改善した.Non-S群では,AGEsが0.52 a.u.(0.48〜0.59)から0.5(0.43〜0.53)へと有意に改善した.他の項目には有意差はなかった.

  考察:赤血球像の変化は,糖化の前期反応の変化と考えられAGEsは糖化の前期〜後期反応全体を表すと評価できる.S群では前期反応の改善があったと考えられ,Non-S群では糖化反応全体に効果があったと考えられた.対象者の血糖値の動態により作用機序は異なるものの,温泉療法は糖化改善に効果があることを窺わせた.

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© 2022 日本温泉気候物理医学会
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