日本温泉気候物理医学会雑誌
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皮膚疾患患者における豊富温泉湯治によるストレス改善効果に対する検討
西川 浩司
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論文ID: 2321

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抄録

  【背景及び目的】豊富温泉を訪れる皮膚病変を持った湯治者において,ストレスと皮膚病変は互いに悪循環の状態に陥っていると推測された.そこで,豊富町ふれあいセンター協力のもとに,皮膚疾患患者に対して豊富温泉湯治によるストレス改善効果及び皮膚病変との関連を検討した.

  【方法及び結果】2016年9月1日から2018年8月31日の調査期間で,115例(男性65例,女性50例)の湯治前後におけるストレス調査票の結果を解析した.

  湯治者のストレスは115例中108例(93.9%)で改善した.湯治前を5とする0-10スケールにおいて,湯治後は1.96±1.67と湯治者のストレスは有意に改善していた(P < 0.001).また,ストレスが改善した108例に,ストレス改善効果は豊富温泉によるものか,或いは環境因子によるものかを0-10スケールで記入してもらった.スケール値は3.65±2.24で,豊富温泉水による効果が湯治者のストレス改善に有意に寄与していた(P < 0.001).

  厚生労働省ストレスチェック6分類(活気・イライラ感・疲労感・不安感・抑うつ感・身体愁訴)に関する29の質問に答えてもらい,6分類におけるストレス度を1-5のスコアにて点数化した.結果,6分類全てにおいて湯治後で有意にストレスが改善していた(P < 0.001).

  115例中105例(91.3%)の湯治者が皮膚病変の改善を感じたと回答し,皮膚病変の改善を感じた湯治者の湯治後の総ストレススケールは1.65±1.20と,皮膚病変の改善が感じられなかった湯治者の5.20±2.39に比べ有意に低かった(P < 0.01).また,ストレスチェックの6分類中,活気・抑うつ感・身体愁訴において,皮膚病変の改善を感じた湯治者においてストレス改善スコアが有意に高かった(P < 0.05).

  【結論】豊富温泉水優位の効果により,皮膚疾患を持った湯治者のストレスは湯治後に有意に改善していた.湯治者のストレス改善と皮膚病変の改善は密接に関連おり,豊富温泉湯治がストレスと皮膚病変の間の悪循環を断ち切った機序を解明するために,客観的データを伴った研究の集積が今後必要である.

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