日本温泉気候物理医学会雑誌
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ドイツ黒い森の温泉保養地における治療・療養・保養─現地視察からうかがえた温泉地の特徴による自然資本活用可能性─
中村 毅阿岸 祐幸
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論文ID: 2332

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抄録

  ドイツの温泉保養地では,土地固有の特徴ある自然資本の経験的な生体に対する効果を医学・気象学・化学などの科学的手法によって検証し,治療手段として承認を得,健康維持,治療や疲労・ストレスからの回復に提供している.自然資本は土壌からの素材である療養泉・ガス・ぺロイド(使用法は浴用,湿布など日本も欧州も差異はないが,欧州ぺロイドの物理的性質は日本に比較して劣り,有機質を多く含有させるため,処理を施す点が異なる)のほか,気候や海洋からの素材も含み,種類や質によって温泉保養地の種が規定されている.その特徴により利用者の目的に応じた場所を選択できるシステムが構築され,健康増進に効率的に活かされている.

  自然資本が豊富であるにもかかわらず活用が十分ではないと思われる日本の現状に対し,ドイツ温泉保養地の近年の動向について,黒い森地域を主とする伝統ある温泉・気候保養地を参考にすべく現地視察体験し現状について学んだ.

  視察を行ったいずれの場所もドイツ温泉協会,ドイツ観光協会から認定されている温泉・気候保養地であったが,特にBad Wildbad, Keidel Mineral-Thermalbadの2つの温泉保養地は,医学的治療,ツーリズム等の提供構造を維持しながら,土地構造,自然素材の長所を活かし,トレンドや感動の要素を組み込み地域社会,温泉地の活性化につなげていた.

  日本とドイツでは温泉地自体の構造,環境,制度などの相違もあり,ドイツでは,補完,代替医療が広く行われ一部公的治療費が支払われるが,プライベート保険を用いて保険償還が行われている(高山真,他:ドイツ4ヶ所の医療施設における統合医療の現状,日東医誌 Kampo Med, 2012; 60(4): 275-282).ドイツの現状をそのまま応用するには容易ではないが,黒い森地方に劣らない量,多様性のある自然資本を所有する日本においても健康増進へのさらなる活用可能性があると考える.ドイツ温泉保養地の取り組みはその方向性の一端を示してくれるのではないか.

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