論文ID: 2368
本症例報告では,両変形性膝関節症および呼吸筋力低下を有する72歳の女性を対象に,水中運動プログラムが呼吸筋力および膝伸展筋力に与える影響を検討する.呼吸筋力の低下は咳嗽能力の低下に関連し,特に身体活動が制限される高齢者において無気肺や肺炎のリスクを増加させる.本報告では,両変形性膝関節症および呼吸筋力低下を有する対象者に対する水中運動の効果を報告する.対象者は8週間の水中運動プログラムに参加した.このプログラムでは,第4肋間以上の深さの水中を歩行し,予測最大心拍数の60%を目標に設定した.介入前後で膝伸展筋力,握力,呼吸筋圧,肺活量,6メートル歩行速度を測定した.結果としては,介入後,呼気筋力,両側膝伸展筋力,および歩行速度の改善が認められた.水中環境の浮力は関節への負荷を軽減し,水の粘性は抵抗を提供して筋力強化を促進する.呼気筋力の増加は,水中での静水圧による抵抗を利用した呼吸筋のトレーニング効果を示唆している.これらの結果は,運動器系の疾患を患い,日常生活活動に制限を有する方における水中運動の価値を強調し,高齢者の呼吸機能維持における有用性も示している.今後の研究では,長期的な効果を検討し,より多様な対象者を含めた検証が必要である.