日本温泉気候物理医学会雑誌
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慢性関節リウマチに対する冷泉浴の効果
温泉浴との比較
吉田 史郎
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1989 年 52 巻 4 号 p. 171-180

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抄録

慢性関節リウマチ (RA) に対する温泉浴の効果はよく知られているが、冷泉浴については研究がない。そこで九重、寒の地獄泉 (単純硫化水素泉、泉温13℃) 入浴のRAに対する影響を別府堀田泉浴 (単純硫化水素泉、泉温40℃) 入浴の場合と比較観察した。
握力、ランスバリー活動指数、日常生活動作点数はいずれも3週間の連浴 (1日2回入浴) によって、両泉とも改善をみたが、有意差は冷泉浴の場合にのみ認められた. したがってRAに対する効果はむしろ冷泉浴の方が勝っていると思われた。
血中コルチゾール、尿中17-OHCS、尿中17-KS値は3週間の連浴中、両泉とも有意の変動を示さなかった。したがって作用機序として副腎皮質刺激作用は考え難かった。一方血中ノルアドレナリンは入浴直後一過性に有意に増加したが、特に冷泉浴で著明であった。しかも増加の程度は冷泉浴の時間と相関し、それが長くなるほど大となった。尿中ノルアドレナリン排泄量も冷泉浴連浴によって次第に増加し、3週後には有意差となったが、なお正常範囲内であった。アドレナリンに関しては血中、尿中とも有意の変動を示さなかった。
以上よりノルアドレナリン増加によって示唆される交感神経刺激がRAに対する冷泉浴効果の機序の一つである可能性が考えられた。

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