日本温泉気候物理医学会雑誌
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片麻痺患者と健常者のデジタル心機図計による判別分析
篠原 鼎根本 宏三丹沢 章八
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1991 年 54 巻 2 号 p. 115-123

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抄録

デジタル心機図計の四変数, すなわちS-S間隔 (脈間隔), S-P時間 (動脈立上時間) とDh/Ch% (切痕有無), S-C時間 (駆出時間) により, 健常者の脳卒中や心筋梗塞を予測しても, どちらに判定してよいか迷う場合がある。この問題を解決する方法として, 変数の総合的な扱い方である, 判別関数式と判別境界値で表現することを試みた。対象者は, 1986年10~12月, 七沢リハビリテーション病院東洋医学科の, 脳卒中後の片麻痺患者14名と他疾患患者3名と健常者7名の合計24名である。まずベッドに仰臥位になってもらい, 30分間の安静後に, アナログ用の圧センサーを左右のいわゆる関部2カ所と, デジタル用の圧センサーを左右のいわゆる尺部2カ所の, 合計4カ所にセットし, 負荷圧力計を見ながら負荷圧力100g/cm2一定になるように負荷圧力を調整し, ベルトで固定した。そして, 日本光電製のアナログ圧脈波計によるアナログ検査と, 日本電気三栄製のデジタル心機図計によるデジタル検査を行った。片麻痺患者の健側手と比較するため, 健常者の左手と健常者の右手のどちらを選択するかの必要があり, それぞれの単相関行列と偏相関行列を検討した結果, 健常者の左手の方が妥当であることが判った。それぞれの変数について, 健常者の左手と片麻痺患者の健側手のF検定とt検定を行った結果, S-P時間は, WELCH法により危険率1%で有意差があり, 脳卒中予測の変数として, S-C時間は, WELCH法により危険率5%で有意差があり, 心筋梗塞予測の変数として, 使えることが判った。健常者の左手と片麻痺患者の健側手の判別分析を行った結果, 判別関数式Z=(2.330E-05)S-St+(-5.329E-02)S-Pt+(-5.151E-03)S-Ct+(1.339E-02)Dh/Ch%+6.947として表現できることが判った。判別境界値は, 0.391である。判別得点が, 判別境界値未満は脳卒中傾向があり, 判別境界値以上は健常者傾向があるとの, 判別ができるようになったと思われる。

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