2007 年 11 巻 1 号 p. 102-110
本研究は,幼児の音素習得の順序に影響を与えている言語に固有の要因を調査することを目的とした。各言語によって,音素の習得順序には差異があることが知られており,出現頻度やその言語における音韻的役割などが,その原因として挙げられる。日本人幼児の言語習得において,後部歯茎摩擦音/破擦音の習得は,言語一般に考えられているよりも早いことが知られているため,[∫][t∫][s]に注目し,母親の子供への話しかけの中での出現頻度と,その音素の現れる環境を調べた。その結果,母親の発話の中では幼児に対して使う幼児語表現の多さから,異なり語数は少ないものの,後部歯茎摩擦音/破擦音の延べ出現数が高くなっていることがわかった。