音声研究
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特集「アジア東部諸言語の喉頭特徴」
チベット声明における発声メカニズム(<特集>アジア東部諸言語の喉頭特徴)
吉永 郁代孔 江平
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2011 年 15 巻 2 号 p. 83-90

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抄録
歌声を形成する言語情報(歌詞)と非言語情報(音高・音長情報を含む旋律及び声質)のうち非言語情報である声質に焦点を当て,電気声門図及び音声信号を基にチベット声明の発声における特徴の解明を試みた。その結果, 声明の音源パラメータは低声門開放率及び高声門開閉速度率の特徴をもち,それらに対応する音響特徴としてH1-H2及びH1-A3が共に低い数値を示した。これらは声明におけるりきみ発声の特徴を表している。次に,電気声門図波形及びスペクトル解析により,単なるりきみだけでなく,声門上構造物の振動によると推測されるザラザラ感(harsh)のある発声も確認された。ここではその周波数は声帯振動と同じF0であった。声明における音域は通常発話時の半分の音域に値する2半音であり,音高も発話時より2半音低めであった。このような特徴からチベット声明は喉詰型発声の伝統を汲むことがわかった。
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© 2011 日本音声学会
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