2022 年 25 巻 p. 119-130
本研究は,ベンガル語無声歯擦音の音声的特徴と異音条件を明らかにすることを目的としている。4名の母語話者のデータに対して,スペクトルモーメント分析を用いて,摩擦音のスペクトル部分のM1(加重平均)とM2(標準偏差)の値の測定を行い,さらに子音に後続する母音のF2の値を計測した。その結果,語頭の子音連続の頭子音において,異音[s]が現れることが明らかとなった。また,異音条件は個人差の影響が大きいことも明らかとなった。さらに,本研究結果を中国語の無声歯擦音の先行研究の記述と比較すると,ベンガル語の/ʃ/は音声学的に中国語の/ɕ/より/ʂ/に近い音であることが示唆された。