本研究では,中国語を母語とする上級日本語学習者(N1取得者)による日本語連続母音の音響的特徴,および母語話者と学習者による知覚パターン,調音運動についての検討を行った。実験参加者は中国語話者学習者19名と日本語母語話者7名で,全員に日本語の連続母音が2回繰り返される4拍の無意味語(例「さえさえ」)を発音してもらい,超音波撮像を用いて舌の動きを同時に記録した。日本語母語話者では,各母音のフォルマント分布がそれぞれ異なっていたが,中国語話者学習者では連続母音の第2母音の音響的重複が顕著であった。特に,中国語話者学習者の/ai/と/ae/,/au/と/ao/の舌の形状が類似していることが観察された。この結果から,上級学習者であっても連続母音の第2母音の音響的および調音運動上の弱化が強く起こり,母語の影響が見られることが確認された。