2002 年 6 巻 3 号 p. 12-24
鹿児島方言の語アクセントに見られる変異を,大学生への聴取実験で得たデータをもとに音韻論,方言接触理論の観点から分析した。その結果, (1)鹿児島二型アクセントのA型(LHLトーン)は比較的よく保持されているにもかかわらずB型(LHトーン)は好まれない傾向にあること,(2)従来のB型語をA型のLHLトーンで発音したものは比較的好まれる傾向にあることがわかった。また,この結果は,他方言との接触により標準語的なピッチ配列を志向していることが原因ではないかと考えられるため,被験者を「方言接触の経験あり/なし」で分類したところ,「経験あり」の方が(1),(2)の傾向が強いことがわかった。また,「経験なし」の者でもこれらの傾向を示す者がいることから,鹿児島方言のアクセント体系に変化が起きている可能性があることを示唆した。