抄録
本調査は,雪面に残る足跡を手掛かりにエゾユキウサギが生息する地点とその密度を記録し,十勝地方中央部における生息状況を明らかにすることを目的とした。
調査の結果,主な生息域として日高山脈に沿った山ろく地域,芽室市街地の北に位置する高台から然別川を挟みさらに北に広がる地域,さらに大きな河川の河畔林を拠りどころとした河川域などが確認された。
生息規模の経年変化を8年ほどの経過でみると,全体としては2014年頃に縮小し,2017年にかけて拡大した後は横ばいの状況であった。経年変化を地域別にみると,「山ろく地域」「北部地域」で生息規模の拡大が確認できた。「山ろく地域」では観測される地点数の増加が目立ち,「北部地域」では高密度地点の増加が特徴的であった。一方「河川地域」では規模の変動が大きく,近年生息規模の縮小が際立っていた。
今後,各地域において生息規模がどのように推移するのかを見極めるとともに,高密度地点が増えていることから農作物等への影響も注視して行く必要がある。