抄録
心停止ドナーからの臓器移植は,確かにドナー不足を補う一つの対策であるが,現状で の成績は決して満足いくものではない.特に肝臓は冷保存だけでは限界があるものと考えられてきた.すなわち心停止ドナーの有効活用は臓器保存学の進歩なくして臨床に貢献できるものではない.近年,腎臓以外にも肝臓,肺などで持続灌流保存方法が臨床に登場しているが,常温での保存を試みる報告が相ついでいる.この考え方は,心停止ドナー臓器を蘇生させる,機能を回復させるなどの考え方としてとらえることができ,従来の臓器保存学から臓器機能再生学へと移り変わってきている.筆者らは,冷温から復温により肝臓を回復させうることに着目し,ブタを用いて温阻血時間60 分,総阻血時間5 時間ののちに肝臓移植を行い生存例を得た.