抄録
【目的】
現在、回復期での早期リハビリテーションや地域での介護予防、および在宅生活への支援が重要視される中、維持期におけるリハビリテーションの提供の場が制限されてきている。そこで今回、療養型病棟の在り方を再認識すべく当院にて調査を行なった。本調査により若干の知見を得たので考察を加え以下に報告する。
【方法】
平成17年10月以降に理学療法を処方された当院入院患者を対象とし、療養型病棟患者100名、回復期リハビリテーション病棟(以下回復期病棟)患者100名を、中枢疾患50名、整形疾患50名ごと無作為に抽出した。年齢、性別、疾患名、入院時Barthel Index(以下BI)、退院時BI、在院日数、退院先を調査し、両者を比較検討した。
【結果】
療養型病棟患者(平均年齢71.6±10.6歳、男性55名、女性45名)の入院時BIは平均75.6±26.1点、退院時BIは平均81.4±24.5点であり、平均在院日数は84±55日であった。また、自宅退院が83名、転院が11名、施設入所が6名であり、自宅退院群のBIは移動能力向上が目立った。
回復期病棟患者(平均年齢73.2±13.1歳、男性47名、女性53名)の入院時BIは平均58.6±29.6点、退院時BIは平均75.6±29.1点であり、平均在院日数は84±58日であった。また、自宅退院が74名、転院が9名、施設入所が17名であり、自宅退院群のBIは移動、移乗能力向上が目立った。
療養型病棟患者の退院時BIは自宅退院群平均87.7±18.3点、転院群平均51.4±30.2点、施設群平均48.3±23.6点であった。また、回復期病棟患者の退院時では、自宅退院群平均87.6±16.8点、転院群平均43.9±33.0点、施設群平均39.7±29.3点であった。
【考察】
両病棟患者とも、中枢疾患、整形疾患に問わず退院時BIの向上がみられた。また、自宅退院者数、自宅退院群BIは両病棟が近似値を示しており、退院時には両病棟とも近い結果を得ていることがわかった。つまり、療養型病棟においても、回復期病棟同様にADL能力の向上が自宅退院率の向上に繋がることを示唆する結果となった。
本調査により、療養型病棟においても、脳卒中ガイドラインで推奨されている回復期リハビリテーション効果に近い数値を得られていた。療養型病棟、回復期病棟を問わずADL能力の向上を目指し、集中的なリハビリテーション医療を提供することが重要であると再認識できた。療養型病棟には、更なる機能回復を求めている方、様々な個人因子、社会的因子を抱えている方が入院している。これからも、患者個々の生活向上を目指したリハビリテーションを提供していく必要があると考える。
【まとめ】
療養型病棟においてもADL能力は上がり、自宅退院率の向上に繋がることがわかった。今回は回復期病棟との比較により、療養型病棟の重要性を再認識することができた。在宅生活への支援が重要視されてきている現在だからこそ、療養型病棟としての在り方を今後も考えていきたい。