Organ Biology
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移植用臓器搬送時の凍結損傷防止に向けたわが国の取り組み
栗原 啓伊藤 泰平會田 直弘剣持 敬日下 守江川 裕人
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2024 年 31 巻 1 号 p. 024-030

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抄録

脳死下臓器提供ではドナー臓器の搬送から移植手術へのプロセスにおいて移植臓器の適切な温度管理が重要である.温度上昇のみならず臓器搬送容器(クーラーボックス)内の氷によって臓器保存液が氷点以下となって凍結損傷を受ける可能性があることにも留意しなくてはならない.実際に搬送時の低温暴露によりグラフト肝が凍結損傷を起こした報告があったため,2021年7月に日本移植学会は臓器凍結損傷予防のため,二重液相を用いる臓器搬送のパッキング標準プロトコールを公開した.われわれはウシ肝臓を用いてその科学的妥当性について検証を行った.クーラーボックス内に充填する氷をフリーザー(-20℃,-80℃)で調製し,その氷によって6時間冷却保存したウシ肝臓の表面温度と病理学的評価を行った.-80℃群では臓器表面は臓器保存液(UW液)の凝固点である-0.7℃以下となり,肉眼的に液と臓器は氷結した.一方,-20℃群では標準プロトコールによるパッキングを行えばUW液の温度は氷点の-0.7℃を下回ることなく,臓器保存液,臓器表面のいずれにも氷結は認められなかった.病理組織学的にも正常構造を保っていた.日本移植学会のパッキング標準プロトコールを用いることにより移植臓器の氷結を予防できた.本総説では,臓器搬送中の凍結障害予防における梱包方法の重要性について述べたい.

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© 2023 日本臓器保存生物医学会
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