2010 年 53 巻 Supplement2 号 p. s55-s58
近年, 鼻噴霧用ステロイドが, アレルギー性鼻炎に大変有効であり, Allergic Rhinitis and its Impact on Asthma (ARIA) では薬物治療の第1選択薬と扱われている。一方, これまで, 我々はアレルギー性鼻炎の病態において, 血管内皮細胞増殖因子 (VEGF) が重要な役割をはたしていることを報告してきた。今回, 鼻噴霧用ステロイド, モメタゾンの臨床効果と併せてVEGF産生に対する作用を検討した。2週間のモメタゾン使用で, 通年性アレルギー性鼻炎のくしゃみ, 水様性鼻漏, 鼻閉は明らかに減少し, 誘発試験後の鼻腔洗浄液中のVEGFも減少傾向を認めた。また, 手術で得られたアレルギー性鼻炎例の下鼻甲介粘膜由来の培養繊維芽細胞を用いた検討で, VEGF刺激にて増加したVEGF産生が, モメタゾンの投与によりmRNAレベルで抑制される結果を得た。モメタゾンによる鼻粘膜線維芽細胞からのVEGF産生抑制が, 臨床効果の機序の一つとして重要であると考えた。